最近、地球温暖化防止のための枠組みを決めた京都議定書に対してアメリカのブッシュ大統領が不支持を表明したこともあって、にわかに関心を集めた地球温暖化の問題。このスタンレー・ジョンソンの「アイスキャップ作戦」のテーマはまさにその地球温暖化である。もし、地球温暖化に対して特効薬ともいえる物質が存在したら、その物質をめぐって何が起こるか。なかなかユニークな着眼点である。
ロイター通信社の記者をしているチャールズ・ハドソンは双子の弟ハリーが行方不明になったことを知る。チャールズのかつての婚約者で、今は弟ハリーの妻であるナスリーンの頼みで、チャールズはハリーの足取りを追ってブラジルの奥地へと向かう。やがて、ハリーの目的がブラジルの雨林の地下に埋蔵されているファルコナイトという物質であったことを知る。そのファルコナイトこそ、地球温暖化を防止できる画期的な物質だというのだ。チャールズはハリーの行方が判らないまま、そのネタをロイター通信のニュースとして流すのだが、それはすべて株価操作のためにチャールズを利用する企みだった。しかし、その裏にはさらに用意周到に仕組まれた大きな陰謀があった・・・。
ストーリーはこんな具合で、前半はなかなか期待を抱かせる展開なのだ。しかし、後半ファルコナイトを巡って南極で英国、ロシアの争奪戦が展開されるのだが、この冒険小説的要素の部分が中途半端で物足りない。いっそのこと、007ジェームス・ボンドなみの活劇にすれば面白かったのにとも思う。
ところで、ロシアがこれにからんでくるのは、地球温暖化によってシベリアは肥沃な穀倉地帯に変わり、東西の経済情勢が一変するので地球温暖化こそロシアにとって千載一遇のチャンスという設定になっているからだ。作者スタンレー・ジョンソンは国連や、欧州議会で環境問題に取り組んだという経歴の持ち主で、あながち絵空事でもないのだろうが、実際の地球温暖化の影響のシミュレーションではどんな予想になっているのだろうか。ちょっと気になるところですね。
さて、今回紹介するセリフは株価操作に関するチャールズとハリーの会話。
「どうして俺をこんなふうに利用しようと思ったんだ」
ハリーは肩をすくめた。
「これが初めてじゃないだろ。いままでだってジャーナリストは、株価操作に利用されてる。(中略)ジャーナリストは自分が利用されていることを知る必要はないんだ。もっと言うと、知っちゃいけないんだよ。でないと犯罪だからな」
| 書名 | アイスキャップ作戦 |
| 作者 | スタンレー・ジョンソン |
| 翻訳 | 京兼玲子 |
| 出版社 | 文藝春秋社 |
| ISBNコード | 4-16-752773-1 |