最近のシリーズ物のミステリとしては、小生の一番のお気に入りであるハーラン・コーベンのマイロン・ボライター・シリーズの最新作である。スポーツ・エージェントであるマイロン・ボライターが、クライアントのスポーツ選手が巻き込まれた事件の解決にあたるというこのシリーズも快調に6作目をむかえた。今回の舞台となるのは野球である。
マイロンのクライアント、ニューヨーク・ヤンキースのクルー・ヘイドが殺害された。クルーは二週間前に行われた抜き打ちのドラッグ・テストで、陽性の結果が出たため出場停止処分を受けていた。そんな中での殺害事件だった。しかも、その事件の容疑者としてマイロンの共同経営者エスペランサが逮捕されてしまう。しかし、エスペランサはなぜか口を閉ざしたまま多くを語ろうとしない。マイロンはドラッグ・テストの結果に疑問を抱き、調査をすすめる。そんな折り、マイロンのもとに送られてきたフロッピィ・ディスクに入っていた画像がヤンキースのオーナーの行方不明の娘であることが判る。やがてこの二つの事件に密接なつながりがあることが判ってくるが・・・。
このシリーズの特徴は比較的重たいテーマでも、アメリカ的な楽観主義で乗り切ってしまう軽さが真骨頂だが、それはこの「パーフェクト・ゲーム」でも健在だ。またマイロンをとりまくレギュラー陣が非常にユニークで面白い。前作で秘書から共同経営者に格上げされた元女子プロレスラーのエスペランサ・ディアス、マイロンの親友にして大富豪ウィン・ホーン・ロックウッド三世、いずれもマイロンの良き理解者であるとともに、頼もしいパートナーである。さらに今回は受付嬢である、ビッグ・シンディが異彩をはなって印象的だ。このエスペランサとタッグチームを組んでいた巨漢の元女子プロレスラー(リング・ネームはビッグ・チーフ・ママ)は確かシリーズ途中からの登場だったと思うが、ますます重要な役どころになってきたようだ。
またマイロンと両親の関係も、伝統的で健全な家庭として描かれており、マイロンも両親の前では良き息子であろうとしている。でも、この両親、少しとぼけたところもあって楽しませてくれる。エスペランサはバイ・セクシャルという設定になっているのだが、そのエスペランサについての両親の会話である。
「彼女は両性愛者よ、アル」
「なんだって?」
「両性愛者。男の子と女の子、どっちも好きってわけ」
パパは考えた。「そいつは羨ましい話だと思う」
「えっ?」
「だって、選択の対象を一般人の二倍持てるじゃないか」
「すばらしいわ、アル、するどい分析をありがとう」
しかし、マイロンの父親も心臓に不安をかかえるようになり、フロリダに移り住むという話が持ち上がり、マイロンを大いに悲しませる。アメリカではすでに出版されている第7作目では、そのあたりにも一層の展開ありそうだ。
| 書名 | パーフェクト・ゲーム |
| 作者 | ハーラン・コーベン |
| 翻訳 | 中津悠 |
| 出版社 | 早川書房 |
| ISBNコード | 4-15-170956-8 |