リンドバーグ・デッドライン


マックス・アラン・コリンズの「リンドバーグ・デッドライン」はその題名にもあるように、大西洋単独横断飛行で有名なチャールズ・リンドバーグの一人息子が誘拐されるという歴史上の実話をもとにしたハードボイルド小説である。

シカゴ警察の刑事ネイト・ヘラーは誘拐事件を解決した経験をかわれて、管轄外のリンドバーグの一人息子の誘拐事件の捜査に協力することになる。しかし、何人かの仲介人を通して伝えられた身代金の要求は、どれが真犯人のものか判らないまま、一人息子の遺体発見という悲劇で幕をとじる。その後、ブルーノ・ハウプトマンという一人の男が犯人として逮捕され、裁判で有罪となった。その判決に疑問を持つ州知事の依頼で私立探偵となっていたネイト・ ヘラーは再びその誘拐事件の真相を求めて捜査を開始するが・・・。

こんな粗筋なのだが、いかんせん物語のほうが複雑にして、冗長すぎる。史実がそのように複雑なのだと言ってしまえばそれまでだが、もう少しすっきりできないものか。また、アメリカではこの事件は大変有名で、だれもが知っている事実というものがあるのかもしれないが、小生には、どこまでが事実でどこからが作者のフィクションなのかがはっきりしないので、読んでいてなんとなく落ち着かなかった。

とは言え、舞台となっている時代が1930年代ということもあって、本の腰巻きにあるように「古きよき正統ハードボイルド」の香りが確かにする。

「新しい証人として名乗り出る気は?」
「ない」と彼は言った。
「ない!」彼女は非常に驚いて言った。その顔から血の気と同情が失せた。彼女はわたしの腕を握った。「シカゴ式嘘発見器にかけてみたら、ネイト?」
「えっ?」オニールの目が大きくなり、恐怖の色を宿した。

シカゴ式嘘発見器とは相手に銃口をつきつけてしゃべらそうとするもので、何度となくこの作品のなかで登場してくる。なにしろ、時代がアル・カポネやエリオット・ネスが活躍した時代であるし、主人公のネイト・ヘラーも単純な正義感の持ち主ではない。金持ちの女性との情事なども物語にはさんであって、ハードボイルドのお約束はしっかり守られている。

歴史上、リンドバーグの息子は死体で発見され、その後犯人は見つかり処刑されている。それに対してこの本で明らかにされた真実(あるいは虚構)はなかなか興味深い。その内容は、まあ読んでのお楽しみに。ただし700ページを越えるこの作品、読むのはけっこう骨ですよ。


書名 リンドバーグ・デッドライン
作者 マックス・アラン・コリンズ
翻訳 大井良純
出版社 文芸春秋
ISBNコード 4-16-752768-5