ウルフ・ムーンの夜


警官時代の銃撃戦でうけた銃弾が心臓のそばに残っている私立探偵アレックス・マクナイトのシリーズ第二作である。しかし、銃弾以上にその際の判断ミスから相棒を死なせてしまったという心の傷がおおきく彼を支配している。そして随所で描かれるミシガン州北部の凍てつくような寒さがこのシリーズの雰囲気を伝えているが、この「ウルフ・ムーンの夜」ではマクナイトは文字取り心身共に凍るような経験をすることになる。

友人のヴィニーの頼みでアマチュアのアイスホッケー・チームのゴールキーパーを引き受けたのが発端だった。相手チームの暴力的な選手ブラックマンと諍いを起こすこととなった。翌日、そのブラックマンの恋人ドロシーがアレックスを訪ねてきて、自分をかくまってくれと言う。とりあえず、自らが管理をするロッジにドロシーを泊めたが、翌朝になるとドロシーの姿は消え、ロッジは荒らさせていた。アレックスはドロシーの行方を捜すが、彼女を捜しているのはアレックスだけではなく、思わぬ事件に巻きこまれていくことになった。

ドロシーの行方を捜すうちに、事件にからんできたFBIの捜査官に対して

わたしは言った。「シャンパーニュ捜査官とアーバニック捜査官。そうでしたね」
アーバニックがうなずいた。
「シャンパーニュとアーバニック」わたしは言った。「いい響きだ。アイスダンスで金メダルをとったことは?」

などと言ったり、軽口のほうは好調なのだが、肝心の捜査の方はさっぱりで、むしろやられ役に徹している感がある。その代わりに相棒のリーアン・プルーデルがなかなかするどい所を見せてくれる。このリーアン・プルーデル、前作ではアレックスのせいで私立探偵を失業したと言って泣きついていた。随分と印象が変わってしまい、すこし戸惑いますね。

事件の方は一応の解決を見るのだが、なんとなく次回作へ尾を引きそうな終わり方になっいる。「身も心も癒したい」と語るアレックスがはたして再生できるのか、その点が興味深い。


書名 ウルフ・ムーンの夜
作者 スティーヴ・ハミルトン
翻訳 越前敏弥
出版社 早川書房
ISBNコード 4-15-171852-4