審問


パトリシア・コーンウェルの検屍官シリーズもついに11作目をむかえることになった。シリーズ全体として、最近ではミステリというより人間ドラマの方に比重がかかっていく傾向にあるようだ。物語は前作「警告」の直後から始まる。

連続殺人事件の犯人<狼男>シャンドンに襲われたものの、危うく難を免れ、シャンドンは逮捕された。しかし、自らが犯人の標的にされたことや、被害者として供述をとられることに心中おだやかではない。しかもシャンドンの有罪を裁判で確定的なものにするために過去の事件を調査をしていくと、あらたな疑惑も浮かんできた。が、その捜査以前に、シャンドンの犠牲になったはずの警察副署長の殺害容疑がなんとスカーペッタ自身に降りかかってきたのだ。

ケイの親友で精神科医のアナ・ゼナーとの会話を通して、ケイの個人的な過去の出来事や思い出を語らせることによって、より人間的なケイ・スカーペッタを描くことに腐心している。しかしアナはスカーペッタに向かって言う。

「心をとざすのは否定することよ。過去を否定すると、それをくりかえすことになる。あなたがいい例よ。最初の喪失を体験して以来、何度となくそれをくりかえしている。皮肉なことに、あなたは喪失を職業にした。使者の声をきき、死者のまくらもとにすわる医師になった。トニーとの離婚とマークの死も経験している。去年ベントンが殺された。それからルーシーを銃撃戦で失いかけた。そして今度はあなた自身。あのおそろしい男が家にやってきて、あなたはあやうく自分を失うところだった。喪失につぐ喪失だわ」

「業火」「警告」「審問」と続く三部作のような感じで、その間が一年づつあいていると読者としては記憶が曖昧な点も多く、読み終わってなんとなく消化不良の感が残る。ベントンの死の真相、検屍局長辞任、マリーノの息子の存在と新しい展開の予感させる点が多く、ファンとしてはとりあえず押さえておくべき一冊というとこか。


書名 審問
作者 パトリシア・コーンウェル
翻訳 相原真理子
出版社 講談社
ISBNコード 4-06-273045-6
4-06-273046-4