「守護者」でデビューしたプロのボディーガード、アティカス・コディアックが主人公のシリーズ二作目「奪回者」である。デビュー作「守護者」では、過激な妊娠中絶反対派に脅迫されている女性医師をボディーガードするという設定だった。妊娠中絶の可否という社会性が目立つばかりで、肝心のストーリーのほうは少しモタモタした感があった。しかし、今回はそんなことを言ってはいられない、なにしろ相手が相手なのだ。
コディアックはかつて軍隊時代に警護をしたことのあるワイアット大佐から、一人娘エリカのボディーガードをしてくれと頼まれる。しかし、コディアックとワイアット大佐の一家とは浅からぬ因縁があった。ワイアット大佐の警護中にその妻ダイアナとコディアックは深い関係になり、そのためコディアックは左遷、夫婦は離婚におよんでいる。しかも、エリカの誘拐を狙う相手はあのSAS(英国特殊空挺部隊)、世界最高の戦闘集団だ。前作「守護者」で親友ルービンを失い、その心の傷が癒えないコディアックらボディーガード・チームはSASに対抗するため死力をつくすが、ワイアット大佐の元妻ダイアナの出現によって事件は思わぬ方向へ展開していく。
やはりこの種の物語では敵役が強敵であればあるほど盛り上がるもので、その点冒険小説でおなじみのSASに勝るものはない。そのあたりのツボもしっかり押さえて、プロのボディーガードを描いたシリーズとして定着しそうな雰囲気を感じさせる。もっともコディアックとチームを組む女性私立探偵ブリジット・ローガンが鼻ピアスをしていたりするのが、現代風と言えばそれまでだが、私には興醒めでここらが難点と言える。
いずれにせよ、前作で親友を失ったコディアックにとって、またまた大きな喪失感だけが残るようなしぶい筋書きになっており、次回作でどのような展開になっているか気がかりだ。
「コーヒーになにか入れるかい?」ヨッシが訊いた。
「わが心のようにブラックで」わたしは答えた。
| 書名 | 奪回者 |
| 作者 | グレッグ・ルッカ |
| 翻訳 | 古沢嘉通 |
| 出版社 | 講談社 |
| ISBNコード | 4-06-273019-7 |