告解の日


アラン・フォルサムという著者をあまり聞かいない名前だと思いながら、あとがきを読んで、あの「狂気のコードネーム<明後日>」の作者だと気付いた。”あの”と言うのにはわたくしごとだが少し理由がある。5年前にパソコンで読んだ本のデータベースを作成することにしたのだが、その最初の本がこの「狂気のコードネーム<明後日>」だったのだ。そのときのメモ書きには「やたらと人が殺されるきらいはあるものの、展開の速さで、エンターテイメントとしては成功している。」と書いてある。今回の新作「告解の日」にもその感想はそっくり使えそうだ。

ロサンゼルスで映画関係者を相手に弁護士をいとなむハリー・アディソンはヴァチカンで神父をしている弟ダニーがバスの爆破事件に巻き込まれ死んだとの連絡を受ける。急遽、遺体引取りのためイタリアに渡ったハリーだったが、そこで待っていたのは二人の刑事による事情聴取だった。ダニーが数日前に発生したヴァチカンの枢機卿の暗殺事件の容疑者だというのだ。不可解なダニーの死の原因をつきとめようとするハリーだが、秘密の組織に誘拐されてします。かろうじて逃れたものの、刑事殺害の汚名まできせられ、秘密の組織と警察の両方から追われることとなる。すべてはヴァチカン内部で進行する中国を巻き込んだ恐ろしい陰謀が原因だった。はたしてハリーはその陰謀を阻止することができるのか・・・。

といったお話なのだが、湖畔の洞窟内での殺し屋との攻防、組織に囚われた枢機卿の救出劇、といったシーンが次々にくりひろげられる。これにテレビレポーターをしている美女や、いわくありげな大使館員などがからみ、サービス満点の筋書きになっている。また、ヘラクレスと名乗り、ハリーの危難を助けてくれる松葉杖の異形の男が登場するが、ハリーを助ける理由を次の様に語る。

「あんたを逃がして、何ができるかを見せてもらうためさ。あんたが知恵と勇気でどこまでやれるか、生き延びられるだけのものを持っているかどうか、疑問の答えを見つけられるだけの能力を、自分の無実を証明できるだけの力を持っているかどうかをな」

このヘラクレス、クライマッススでも重要な役を演じるし、なかなか良い味をだしている。

実はヴァチカンの位置づけというのがわれわ日本人には判りにくいし、このストーリーの背景になっている中国をめぐる陰謀もピンとこないのだが、これにこだわらなければ冒険活劇映画を観るように楽しめるだろう。最後に細かなことだが新潮社に苦言を。上巻にヴァチカンの地図がのっているのだが、読者がこれを必要とするのは下巻のクライマックス、ヴァチカンでの救出劇のシーンのはずだ。しかし、下巻にはこの地図がのっていないのだ。翻訳にあたって上下二冊になったせいだと思うが、ここらあたりの細かな配慮がほしいと思う。


書名 告解の日
作者 アラン・フォルサム
翻訳 戸田裕之
出版社 新潮社
ISBNコード 4-10-245403-9
4-10-245404-7