ジェフリー・ディーヴァーの最新作「コフィン・ダンサー」である。そしてリンカーン・ライムとそのチームが戻ってきた。前作「ボーン・コレクター」では自殺願望にとらわれていたライムだが、今回は民間人でありながら捜査の陣頭指揮をとるかっこうだ。とは言え、我がままぶりや、頭の切れ味は相変わらずだ。
武器密輸の黒幕を有罪にできる重要証人の一人が殺された。犯人は一匹狼の天才的殺し屋コフィン・ダンサー(棺桶の前で踊る死神)と思われた。コフィン・ダンサーはライムにとって、かつて部下を殺されたこともある仇敵でもある。残る二人の証人を大陪審が始まるまでの45時間守り通せるか? 鉄壁の警護体制の警察に対し、神出鬼没のコフィン・ダンサーが襲いかかる・・・。
ディーヴァーお得意のタイム・リミットをもうけた設定、ライムとコフィン・ダンサーの裏のウラを読む駆け引きと、面白さは文句なく一級品だ。
しかし、・・・である。まだお読みでない方のためにどこがどうと具体的には言えないのだが、話がうますぎて納得いかない点がある。作者の立場ではきっと、各登場人物のタイムチャートなど作成してつじつまが合うようにしているとは思うのだが、すっきり呑み込めないのだ。そして、そのこと以上に気になるのが同じくディーヴァーの「悪魔の涙」と犯人が仕掛けた罠が酷似していることだ。もともと文書鑑定士キンケイドを主人公にすえた「悪魔の涙」とライムのシリーズは多少の違いはあるものの双子みたいな作品で、今後両シリーズを書き続けるのは(書き分けるのは)ディーヴァーにとって辛い仕事になるのじゃなかろうか、大きなお世話だけれど。
この作品では、ライムとアメリア・サックスの関係も少し進展をみせることになっているが、保護すべき証人の一人女性パイロットであるパーシーとライムの関係もあってすんなりとはいかない。そのパーシーがコフィン・ダンサーに殺された夫エド(彼もまたパイロットであった)の思い出をサックスに語るシーンでは次のようなプロポーズが紹介される。
「するとエドは言った。”パーシー、きみにダイヤモンドを用意した”」
「ほんと?」
パーシーは微笑んだ。「彼は一気にエンジンを全開にして、操縦桿を引いた。機首がまっすぐ上を向くくらい」彼女の目から涙がぽろぽろとあふれ出た。「失速ぎりぎりになって彼が姿勢を立て直すまでの間に、目の前に夜空が広がった。するとエドは私の耳もとでこう囁いたのよ。”好きなのを選ぶといい。満天の星から-どれでも好きなのをきみにあげるよ”」
と言うわけで、今回は新手のプロポーズ方法を紹介したけれど、こればっかりは誰でもができる方法ではありませんね。
| 書名 | コフィン・ダンサー |
| 作者 | ジェフリー・ディーヴァー |
| 翻訳 | 池田真紀子 |
| 出版社 | 文藝春秋 |
| ISBNコード | 4-16-319580-7 |