昨年の話題作「ボーン・コレクター」の作者ジェフリー・ディーヴァーの新作である。
首都ワシントンの地下鉄で発生した銃の乱射事件。ほどなく、市長のもとへ2000万ドルを要求する脅迫状が届く。金を払わなければ、4時間おきに無差別殺人を繰り返すというのだ。そこで登場するのが、今は民間の仕事をしているが、元FBI文書研究室の捜査官だったパーカー・キンケイドである。脅迫状の筆跡から犯人像を絞り込みながら、次の犯行現場を予測しようとするFBIと犯人の知恵比べがはじまる。
と、ストーリーの展開は「ボーン・コレクター」にかなり似ている。しかし、そこは達者なジェフリー・ディーヴァーだ、文書鑑定という特殊なプロ世界を堪能させながら、テンポの速い展開であきさせることはない。ただ、パーカーとFBIの女性捜査官の微妙なロマンスも描かれており、そこらも「ボーン・コレクター」と同じなのだが、ミステリ部分と違って、そちらはご愛嬌で、とってつけた印象がぬぐえない。
さて、いつも作品の中から名(迷)セリフを紹介することにしているが、今回は芸術家のように完璧な犯罪をもくろむ犯人と対決したパーカーのプロの矜持をしめす次のセリフだ。、
引っ立てられた○○○○は、玄関で立ち止まると後ろを振りかえった。「認めてくれよ、パーカー。おれが優秀だってことを」未練がましい口ぶりだった。「あと一息だったんだ」
パーカーは首を振った。「パズルの答えは正しいか間違っているのかのどちらかだ。”あと一息”はありえない」○○○○には犯人の名前がはいるので、とりあえず隠しておこう。でも、このセリフのあとに、まだ山場が待っているのが、ディーヴァーらしい展開だ。そして、かのリンカーン・ライム(「ボーン・コレクター」の主人公)もチョイ役で登場する。ディーヴァー・ファンならずとも読んで損はない。でも、ディーヴァーの最高作は「静寂の叫び」だと思うのだが、皆さんはいかがだろうか。
書名 悪魔の涙 作者 ジェフリー・ディーヴァー 翻訳 土屋晃 出版社 文藝春秋 ISBNコード 4-16-721871-2