スーパー・エージェント


このコーナーでも何回か取り上げたマイロン・ボライター・シリーズの第5作目「スーパー・エージェント」を読む。題材のスポーツは第3作と同じくバスケットボールだが、今回は女子バスケット界がその舞台だ。
今回、マイロンは新興の女子プロバスケット・リーグのスター選手ブレンダ・スローターのボディ・ガードを引き受けることになる。ブレンダの父親ホレスが失踪し、彼女自身も何者かに脅迫されているという。そしてホレス・スローターはマイロンがバスケットに青春を賭けた時代に世話になった人物でもあった。しかし、そのホレスが死体で発見されるにおよんで、事件は複雑になっていく。警察はブレンダを容疑者として追求するが、マイロンは二十年前に失踪したブレンダの母親と関係があるとにらむ。二十年前の失踪事件を追うマイロンの前に、やがて著名な政治家一族の権力が立ちふさがってくる・・・。

おなじみの相棒ウィンや秘書のエスペランサも健在だ。前作ではとある事情からマイロンへの協力をこばんだウィンもマイロンをしっかりバックアップしてくれているし、その皮肉や警句も好調だ。
次期州知事候補でブレンダの母親の失踪事件の鍵を握っていると思われるアーサー・ブラッドフォードと面会したあとのマイロンとウィンの会話。

「アーサー・ブラッドフォードはわたしに嘘をついている」
ウィンは唖然とした。「きみはあの政治屋を信じていたのか? ということは、サンタクロースの存在も信じるのか?」

マイロンが過去の事件の真相を追うことによって、周囲に波風がたつのを懸念したウィンはいう。

「執拗さと愚かさの差は紙一重だ」ウィンがいった。「一線をこえないよう、注意してほしい」

そして物語は、このウィンの心配したようにマイロンにとって、とても苦い結末がまっている。


書名 スーパー・エージェント
作者 ハーラン・コーベン
翻訳 中津悠
出版社 早川書房
ISBNコード 4-15-170955-X