刻印


本の帯には「アメリカで『羊たちの沈黙』に匹敵するサイコ・サスペンスと絶賛」とあるが、これはどう考えても言い過ぎですよ・・・。レスリー・グラスの「刻印」の話しである。

サンディエゴで女子大生が殺害される。一方でニューヨークで新進女優エマ・チャップマンに不気味な脅迫状が届く。そんな事件を若い女性刑事エイプリル・ウーが女優の夫である精神科医と共に追う、というシチュエーションは「羊たちの沈黙」になぞらえることができるが、いかんせん登場人物にそれほどの魅力がない。緊迫感が伝わってこない。女性刑事エイプリル・ウーはその名が示すように中国系である。ときおり白人に対する劣等感を感じながら、なかなか健気な感じがして応援してやりたいのだが、犯人に肉薄していく推理も精神科医のほうに先行されている。

さて、この作品中から紹介するセリフは女優エマ・チャップマンのマネージャー、ロニーのセリフです。主演した映画がヒットするが、同時に不気味な脅迫状が届くようになったことを心配するチャップマンにマネージャーが語る。

「この業界ではね、みんな下積みの時代ってものがあるの、わかってるでしょ」とロニーはいった。
エマはひとりうなずいた。わかってるわ、結婚にだってあるもの。
「いーい、なんだって前向きに対処しなきゃ。成功は挫折より対処がむずかしいものなの。気味の悪い手紙だって、覚悟しなきゃ」

成功は挫折より対処が難しいとは言い得て妙ですね。思わぬことから総理大臣になった森首相のその後の舌禍事件などをみていると思わず納得してしまうのである。


書名 刻印
作者 レスリー・ウー
翻訳 翔田朱美
出版社 講談社
ISBNコード 4-06-264787-7