斬首人の復讐


さて、マイケル・スレイドの『斬首人の復讐』です。このマイケル・スレイドは弁護士ジェイ・クラークを中心とするチーム作家のペンネームらしい。こんな過激な作品を他人と一緒に書くなんて信じがたいところではある。惜しげもなく殺人が連続し、かつその描写も遠慮がない。意外な犯人の連続ではあるが、強引という印象のほうが残る。わたしなら”豪腕マイケル・スレイド”とコピーをつけますね。

ブリティッシュ・コロンビア州の山中で先住民の過激派が問題を起こし、騎馬警察と対峙することなる。しかし、その抗争の最中に、首なし死体が発見される。そして、時を同じくして警察に生首が送りつけられる。騎馬警察警視正ロバート・ディクラークはこの難局に当たるが、犯人はディクラークに挑戦するように犯行を重ねる。そして、この事件が過去に解決したヘッドハンター事件と深く関わっていることに気づくのだが・・・。

本書の解説(ミステリ評論家川出正樹氏)にもあるように、この作者は好みが分かれすね。かなりアクが強い。”カナダのディーヴァー”などというキャッチ・コピーが使われているけれど、おもむきはかなり異なる。ディーヴァーはまさにジェットコースターのように早い展開で、ひたすら物語に不要な贅肉は削いだ語り口だが、マイケル・スレイドの場合はかなりペダンチックな面もある。例えば、シャーロック・ホームズで有名な『まだらの紐』に登場する蛇の種類をめぐって興味深い会話が交わされている。ミステリ・ファンにはたまりませんね。また、本書ではカナダの先住民の歴史についても多くのページを割いている。

こうした側面と容赦ない殺人シーン、性的表現とのアンマッチがユニークとも言える。ここらが、いかにもチーム作家らしいところです。

さて、先住民の過激派との争いが戦闘状態になったディクラークは部下とともに対応策を協議するが、部下の一人がこんなことを言う。

これは知りませんでした。「戦力は圧倒的に、実戦は慎重に」とはコリン・パウエルらしい。やはりブッシュ大統領とはあわないはずです。

「おれはコリン・パウエルの提言を指示します」というジョージの発言に、この会議の戦略責任者であるディクラークは思わず目をしばたたいた。「<戦力は圧倒的に、実戦は慎重に>というものです。戦時においては資力は最大限に蓄え、それを使うときは極力控えめにするのが勝利の鍵だという考え方です。パウエルが<砂漠の嵐>作戦で採用して成功したこの戦法なら、ここでもこれ以上の悲劇の増大をくい止められると思います」

これは知りませんでした。「戦力は圧倒的に、実戦は慎重に」とはコリン・パウエルらしい。やはりブッシュ大統領とはあわないはずです。

(2005.09.25)


書名 斬首人の復讐
作者 マイケル・スレイド
翻訳 夏来健次
出版社 文藝春秋
ISBNコード 4-16-770511-7

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