鉄槌


ポール・リンゼイの『鉄槌』です。デビュー作の『目撃』以来、つねにFBI捜査官を主人公にすえながら、官僚組織のなかにおさまりきれない一匹狼を描いてきたポール・リンゼイ。本作『鉄槌』もFBI捜査官ジャック・キンケイドが主人公だが、裏で自ら盗みを働くまでに道を踏み外している。

シカゴのクック刑務所内に仕掛けられた爆弾。犯人の要求は三年前に行方不明になった娘の捜査再開と真相究明。一匹狼のジャック・キンケイドと義足の黒人捜査官ベン・オールトンは偶然コンビを組んで捜査にあたることになる。実は敏腕の二人の捜査官の活躍で三年前の事件の真相が明るみにでる。が、その結果に一抹の疑問を抱いた二人は密かに捜査を続けるが、やがてとんでもない魔物を目覚めさせることになる・・・。

もともとポール・リンゼイはストーリー・テラーとして優れているので、手慣れた筆運びで、面白く読ませてくれる。二人の異端の捜査官がお互いを理解し、友情を育むまでになる展開が魅力的だ。ベン・オールトンはジャックに言う。

「誰にだって、二人の人間がいるんだーーなりたい自分と、甘んじて受け入れている現在の自分と。あんたの場合、そのギャップが少しばかり大きいんじゃないかな」

そして、物語は意外な結末をむかえるが、よくよく考えると、この結末以外にまるくおさめる方法はなかったろう。

本書の帯には「パトリシア・コーンウェル激賞」とある。パトリシア・コーンウェルの名前にもうそれほどの神通力はないと思うのだが、まあ講談社ですから仕方ないですかね。

(2005.08.07)


書名 鉄槌
作者 ポール・リンゼイ
翻訳 笹野洋子
出版社 講談社
ISBNコード 4-06-275148-8

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