殺人小説家


デイヴィッド・ハンドラーの『殺人小説家』はホーギー・シリーズの八作目だそうだが、あいにくとこのシリーズを読むのは初めてだ。主人公スチュアート・ホーグ、かつては嘱望された作家ながら現在は、ベストセラー一位に輝いた自叙伝が五冊あるというゴーストライター。『殺人小説家』の着想もまったく新しいものではないが、都会的な洒落た感覚でそつなく読ませる作品に仕上っている。

スチュアート・ホーグのもとに、作家志望のアンサーマンと名乗る人物から小説の第一章が送られてくる。新人離れした才能にびっくりしたホーグだったが、なんと小説とそっくりの殺人事件が発生する。そして、新たに第二章がホーグのもとに送られてきた。警察に事情を説明したホーグだが、小説のなかで使われていたある一節が頭の片隅でひっかかっていた・・・。

当然ながら、これはと思う容疑者が登場し、そして最後に真犯人が・・・、というお約束はしっかり守られている。その過程でホーグの大学時代の親友タトル・キャッシュの成功と退廃、二人の友情の変遷が語られることになる。しかし、あくまでタッチは軽い。

テレビ・キャスターのカッサンドラはホーグから特ダネを得ようとしてこんなことを言う。

「あたしにはピュリッツァ賞が必要なのよ、ホーギー」
「僕には新しい前立腺が必要だ。だからって、手に入れられるってものじゃない」

こんな調子です、ホーグは前立腺が必要というほどの年齢ではないと思いますが。なお、このシリーズを知っている方にはいろいろな楽しみはあるでしょう。

それに、ホーグの元妻で舞台女優のメリリー・ナッシュが『暗くなるまで待って』の再演の準備のため、家の中を真っ暗にして生活していることが前半で説明されるのだが、これがクライマックスで一つの鍵となっている。これと同じ着想も以前にあったような気がするのだが、どのミステリであったか思い出せません。

(2005.07.18)


書名 殺人小説家
作者 デイヴィッド・ハンドラー
翻訳 北沢あかね
出版社 講談社
ISBNコード 4-06-275109-7

ホームへ戻る酒とミステリの日々へ戻る