エクスペリメント


「ネアンデルタール」のジョン・ダーントンの新しい作品「エクスエリメント」である。今回は最新の遺伝子技術をベースにした作品だ。孤島で通常の世界から隔離されて育てられ、生活している青年男女たち。一見なにひとつ不自由のない生活のようだが、行動は厳しく管理されている。そして時おり仲間の誰かが突然姿を消し、急病で亡くなったと告げられる。そんな生活に疑問を持った青年スカイラーが島から脱走したことによって、しだいに彼らの存在理由が明らかになっていく。その裏には謎の集団のとんでもない野望が潜んでいた・・・。

着想は大変ユニークで面白いが、話の展開はいささか安直なところがあって、サスペンスに欠けるのが残念。スカイラーを助けて真相に迫る新聞記者ジュード、双子について研究する女性研究者ティジー、彼ら三人も浅からぬ因縁で結ばれているのだが、そこらもご都合主義といった感じがする。

さて、ジュードとティジーのベッドシーンでのセリフ。

「きみの瞳に乾杯」
ティジーは手を伸ばして彼のバスローブの紐を引っ張り、ローブの前が開いて裸体があらわれると、映画の台詞で乾杯を返した。
「きみにもな、ルーイ。美しい友情の始まりになりそうだ」

わざわざ注釈するのも野暮だが、ともに映画「カサブランカ」のセリフですね。「きみの瞳に乾杯」はかなりの意訳だが、これぐらい有名になってしまうとそう訳する以外に手はないでしょうね。もう一つのセリフはこれもボガードのセリフだが、映画のラストシーンでフランス人警察署長へ語りかけるものだ。美しい友情というのは額面通り受け取っていいのか、かなり微妙な使われ方だったと思う。いずれにせよ、「カサブランカ」のセリフはやはり有名なんですね。


書名 エクスペリメント
作者 ジョン・ダーントン
翻訳 嶋田洋一
出版社 ソニー・マガジンズ
ISBNコード 4-7897-1536-1