カインの檻


ハーブ・チャップマンのデビュー作『カインの檻』は猟奇的な連続殺人事件を扱った、いわゆるサイコ・ミステリに属するが、その内容はかなり複雑で、すんなりと表現しにくい作品だ。

残虐な連続殺人事件が発生する。FBIのプロファイラー、ジョン・キーナンは捜査に協力することになる。そして、犯人のアイザック・ドラムは逮捕されるものの、若い捜査責任者ウィル・パクストンが犠牲となる。ウィルを責任者に推挙したことで、ジョン・キーナンは罪の意識をかかえることになる。そして、第二部。その事件から8年、ドラムの死刑執行が間近に迫っていたが、ドラムは自分を減刑しなければ、ウィルの遺児ザックが殺されると予言するのだが、・・・。

FBIのプロファイラーを主人公にすえた小説のなかでも、これほど犯人の生い立ち、背景を緻密に設計したものは珍しい。そういう意味では力作だ。しかし、特異な設定の第二部だが、話の展開がもたついて、ミステリとしてこの設定が活かされているとは言えない。作者チャップマンが描こうとしている内容が複雑で、単純ではないせいもあるのだが、物語も混沌としていく。

とくにドラムの死刑執行と、それに立ち会うキーナンの様子を丁寧に描いているのが印象的だ。いかに非道で極悪な犯人であり、その犯人に憎悪を抱いても、死刑執行に立ち会ったからといって、どんなカタルシスも得ることはできない。最近、被害者やその遺族の心情に配慮した厳罰主義が優勢だが、はたしてそれが被害者の遺族の心を癒すことになるのか? わたしにはそんなテーマに思えた

(2005.07.10)


書名 カインの檻
作者 ハーブ・チャップマン
翻訳 石田善彦
出版社 文藝春秋
ISBNコード 4-16-770506-0

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