10年前のロデオ・ダンスの夜に何があったのか? 10年ぶりに見つかった白骨死体が真実を明るみに出す。
ジェームズ・ハイムのデビュー作『ロデオ・ダンス・ナイト』はしっとりとした余韻が残る秀作だ。2004年のアメリカ探偵作家クラブの最優秀ペイパーバック賞にノミネートされたが、おしくも受賞は逃している。
工事現場から見つかった白骨死体は、10年前にロデオ・ダンスの夜に行方不明となったシシー・フレッチャーだった。保安官は元テキサス・レンジャーの隊長で、いまは引退し牧場を経営しているジュレマイア・スパーに協力を求める。やがて、シシーが町の名士と多くの関係を持っていたことが判るが、そのころ、シシーの弟マーティンはある企てを実行に移そうとしていた・・・。
黒人の保安官助手クライド・トーマス、その恋人で検事補のソーニャ・ニコルズなど多彩な顔ぶれが登場するが、やはり主人公ジュレマイア・スパーが印象的だ。今でこそ引退しているものの、テキサス・レンジャーとして仕事一筋でやってきた彼は、家族との関係はうまくいっていない。しかも、一人娘が癌で余命幾ばくもない状況で、妻マーサは悲しみから逃れるようにアル中に陥っている。事件とは無関係に見えるが彼の家族だが、やがて事件と深く関わっていたことが判る。
スパーがソーニャに語る次の言葉は彼の人となりを良く表現している。舞台がテキサスということもあって、ついジョン・ウェイン演じる古風な保安官を連想させる。
「きみも私と同じくらい張り込みをすれば、あらゆることについて少なくとも一度は考えるようになる。私の意見では、罪悪感とは非常に強い感情だということだ。浮気について言えば、一生罪悪感を感じることのために一時間でも割くのはバカげていると思っている」
それだけに、結末で彼が向き合う真実にはつらいものがあるが、小説としての成功の要因にもなっている。こんなふうに紹介すると、重苦しい雰囲気のミステリと解されるかもしれないが、意外な活劇的要素も盛り込まれていて、楽しめる要素も盛り込まれている点も強調しておこう。なおシリーズ化は難しいと思える設定だが、アメリカではジュレマイア・スパーの二作目"Scared Money"がすでに上梓されている。
ところで、スパーはゴルフについてこんな事を言う。
クラブハウスに向かう途中、ソーニャが訊いた。「ゴルフはするんですか」
ジュレマイアは立ち止まってタバコに火をつけ、一服した。「若いころに何度か試してみたが、あきらめたよ」
「どうしてですか?」
彼は肩をすくめた。「どうにもならないこともある。自分が愚かに見えることのために、五時間も割くなんて意味がないと思った」
わたしのようなゴルフ嫌いにはぴったりくる言葉です。こんど、ゴルフをやならい理由を訊かれたら、このように答えよう。
(2005.06.26)
| 書名 | ロデオ・ダンス・ナイト |
| 作者 | ジェイムズ・ハイム |
| 翻訳 | 真崎義博 |
| 出版社 | 早川書房 |
| ISBNコード | 4-15-175551-9 |