酔いどれ故郷にかえる


ケン・ブルーウンの『酔いどれ故郷に帰る』。アル中にして読書家ジャック・テイラーを主人公としたこのシリーズは前作『酔いどれに悪人なし』のラストでジャックがロンドンへ出て行くことになっていた。次回作はてっきりロンドンが舞台と思っていたら、ジャック・テイラーは再びアイルランドのゴールウェイに戻ってきた。

ゴールウェイに戻ったジャックを旧友が迎えてくれた。そして、さっそく事件の依頼が舞い込むことになる。連続して発生するジプシー殺しの調査だ。警察はジプシー同士の抗争として本気で捜査をする気がない。しかし、ジプシーに協力するジャックを好ましく思わない人間もおり、何者かに襲われることになるが・・・。

という筋書きなのだが、このシリーズではジャック・テイラーが私立探偵らしい活躍をするわけではない。彼が動き回ることによって事件のほうで勝手にその真実があきらかになるというパターンは前作と一緒だ。

相変わらずの読書家で、たくさんの本の話が出てくるが、わたしのようにミステリ以外はさっぱりという読者には判らないことが多いだろう。その中でローレンス・ブロックのマット・スカダー物が登場するのは嬉しい。もっともジャック自身もスカダーが自らのアル中更正をたっぷり語る場面では読むスピードをあげなくはならないと言っていが、これは本書を手にとる読者にも言えることで、ジャックが酒にのまれる場面は読むスピードをあげることになる。そして、本編でジャックはコカインをやるようになっている。アル中ならともなくヤク中ともなると、これはちょっと辛い。ところが、こんなジャック・テイラーなのだが、女にはとにかくもてる。なにしろ、ロンドンに行っている間に結婚しているのだ。これには驚きました。

好き嫌いが別れるタイプの小説だと思うが、こういうタッチが嫌いでなければ楽しめるでしょう。

かなりひねった物語だが、その中で素直なジョークが一つ紹介されている。

「男が図書館で、バーガーとチップスをくださいと言った。司書は答えた。”ここは図書館です」
おれはオチを知っていた。だが、アイルランドでは、絶対に、本当に絶対に話の腰を折ってはいけない。だから言った。
「それで?」
「その男は声を落として言った。”バーガーとチップスをください”」

確かに、このネタは聞いたことがありそうですね。

(2005.06.05)


書名 酔いどれ故郷にかえる
作者 ケン・ブルーウン
翻訳 東野さやか
出版社 早川書房
ISBNコード 4-15-175052-5

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