ダナ・レオンの『ヴェネツィア刑事はランチに帰宅する』はヴェネツィア警察のグイド・ブルネッティ警視を主人公としたシリーズ物で、翻訳されたものとしては『ヴェネツィア殺人事件』に続いて二作目にあたる。原題は"Wilful behaviour"だが、『ヴェネツィア刑事はランチに帰宅する』というタイトルは、なかなか本書の雰囲気をよくとらえている。
グイド・ブルネッティは大学教授をしている妻パオラの教え子から奇妙な相談を受ける。祖父の過去の汚名をすすぐことができるか、というものだった。しかし、その女子大生が何者かに殺されてしまう。しかも、彼女の銀行口座には不審な大金の入手金が記録されていた。そして、第二次大戦中に行方不明となった数々の名画が事件に関係していると思われたが・・・。
この種のミステリですから、派手な展開はなく、じっくりと物語は進んでいく。昨今のミステリに慣れていると、もう少し動きがあったほうが良いと思えるが、ここはランチに帰宅する警視にのんびりとつきあうのが正しい読者の態度というものでしょう。
それにしてもイタリアって、そんなにコネ社会なのでしょうか? ブルネッティの秘書のエレットラは貴重な情報収集係だが、どうやら豊富なコネを利用して情報を集めているらしい。このエレットラはなかなか魅力的な女性なのだが、このシリーズは翻訳されている作品が途中でとんでいるので、彼女について細かな点がわからないのが惜しまれる。また、ランチのメニューなども実に細かく紹介されているが、イタリア料理にうといわたしにはピンとこないのが残念です。
『ヴェネツィア刑事はランチに帰宅する』の事件の背景となっているのは、第二次世界大戦当時のイタリア社会の傷跡とも言えるが、ムッソリーニに支配されたあの時代を懐かしむ勢力の存在など、複雑な現在の状況をうかがい知ることができる。比較的リベラルと思われるブルネッティはこんなことを語っている。
「自分たちが信じていることが真実だと思っている人は怖いと思う。そういう人は、自分の真実に合致させるためだったら、事実をねじ曲げようが、何だってするんだから」
最近の日本と中国の関係を思うと、考えさせられる言葉だ。中国と日本、両国にこうした人々がいるように思えますね。
(2005.05.08)
| 書名 | ヴェネツィア刑事はランチに帰宅する |
| 作者 | ダナ・レオン |
| 翻訳 | 北條元子 |
| 出版社 | 講談社 |
| ISBNコード | 4-06-275062-7 |