つねに秀作を発表しているヴァル・マクダーミドの新作、そして、その新作『過去からの殺意』が2004年度バリー賞受賞作品とくれば期待がふくらむところだ。ところが、過去のマクダーミドの作風とはかなり勝手が違うため、評価が分かれるでしょう。正直に言えば、これと言った決め手に欠けるという印象だ。
時は1978年、大学のある小さな田舎町で若い女性ローズマリー・ダフが殺されるという事件が起こる。遺体の発見者である大学生4人組に、嫌疑がかかるものの、これといった証拠もなく事件は迷宮入りとなる。そして25年後、事件の再捜査が開始されると、4人組の一人ジギーが火災事故で亡くなる。そして、葬儀には差出人不明の花輪が届いていた。花輪についていたカードには「ローズマリーは追憶の花」と書かれていたが・・・。
理不尽な疑いをかけられ苦悩する大学生4人組を主人公にすえ、さながら青春小説の側面を持っている。とは言え、ミステリらしく最後には意外な真犯人も用意されている。しかし、そこに行くまでのプロットがいささか冗長。殺人事件に巻き込まれてしまった4人の人生が、25年を経て大きく狂ってしまったことを強調するにはいささか展開は軽すぎるし、決め手に欠けるという理由だ。
なお、マクダーミドの『シャドウ・キラー』で主人公であった、犯罪心理学者フィオナ・キャメロンが名前だけ登場する。肝腎のトニー・ヒルとキャロル・ジョーダンのシリーズも少し曲がり角だし、少し気になりますね。
(2005.04.10)
| 書名 | 過去からの殺意 |
| 作者 | ヴァル・マクダーミド |
| 翻訳 | 宮内もと子 |
| 出版社 | 集英社 |
| ISBNコード | 4-08-760483-7 |