耽溺者


グレッグ・ルッカの『耽溺者』は、おなじみボディー・ガード、アティカス・ゴディアック・シリーズのさしずめ番外編でしょう。同シリーズでおなじみの女探偵ブリジット・ローガンを主人公にすえ、彼女の過去も明らかにされるという設定。無論、アティカスも脇役として登場してくる。

かつてヘロイン中毒であり、妹のように可愛がっている女性ライザが麻薬の売人の殺害容疑で逮捕される。ライザの無実を証明するために、ブリジットは麻薬密売の組織に近づくが、麻薬取締局もまた捜査官を密かに潜入させていた。そして、ライザの無罪を勝ち取るためにブリジットは一計を案ずるが・・・。

それにしてもブリジットは意固地な女である。アティカスのほうがよほど素直な性格に見えてしまう。少しはアティカスに頼ればよさそうなものだが、あくまで自分で事態を収拾しようとする。まぁ、そういうスタイルが魅力でもあるし、だから主人公にもなれるわけだ。ライザとは時に口論にもなるのだが、ブリジットはこんなことを言う。

「あんたは自己満足のひとでなしよ」
あたしは立ち上がった。「自己満足の方が自己憐憫よりましさ」

薬物中毒という過去をもちながら、自己憐憫とは無縁のブリジット・ローガンらしいセリフでしょう。

ただ、麻薬組織との抗争で、かなりブリジットは痛めつけられるので、なんとく後味の悪いものが残ると感じるのはわたしだけでしょうか。それに薬物中毒というのは、そんなに簡単に抜けられるものなのでしょうか、ちょっと疑問も残る。時間的には、前作『暗殺者』に続いており、アティカスとブリジットの仲たがいも解消にむかう過程にあるので、アティカス・ゴディアック・シリーズを追いかけている人はとりあえず押さえておく必要があるといったところでしょう。

それにしても、鼻にピアスをした女主人公というのは、わたしの年代では正直言って抵抗がありますね。ブリジットの鼻ピアスをめぐる逸話を紹介しておきましょう。

「(前略)あなたのしたことを見て、ご両親はなんとおっしゃった?」
「母は笑いだして、まぬけに見えるって言ってました」あたしは言った。「父には、お前の鼻なんだからおまえの好きなようにすればいいが、もう少し賢いと思っていたがな、と言われました」

わたしも、子供が鼻ピアスをしたときのためにこのセリフは覚えておこう。

(2005.03.21)


書名 耽溺者
作者 グレッグ・ルッカ
翻訳 古沢嘉通
出版社 講談社
ISBNコード 4-06-274982-3

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