T.ジェファーソン・パーカーの『レッド・ライト』はマーシ・レイボーン・シリーズの二作目にあたるが、三作目『ブラック・ウォーター』が最初に早川書房から翻訳されたといういきさつがある。
カリフォルニア州オレンジ郡の殺人課巡査部長マーシ・レイボーンは19歳のコールガール殺人事件の捜査に当たっていた。当夜、二人の男が被害者の自宅を訪ねていたが、鑑識の結果、その一人が同僚のマイク・マクナリー刑事であることが判明した。マイクと恋人の関係にあるマーシは、彼を信じようとするが新たな物証の発見に迷いが生じる。やがて、並行して捜査をしていた1969年に発生し迷宮入りとなっていった娼婦殺人事件との関係が浮かび上がり、保安官事務所の暗部に光をあてることに・・・。
『サイレント・ジョー』でパーカーのファンになった読者は、たいてい『ブラック・ウォーター』を先に読んでいるはずだ。そして、マーシの置かれている微妙な立場の原因が判然とせず、何となくすっきりしない印象が残ったはずです。これでやっと納得がいこうというものだ。『ブラック・ウォーター』でもマイクとしこりが残っていたが、当然でしょう。このシリーズに関する限り、早川書房はフライングでしたね。
パーカーらしい余韻の残る秀作(ちなみにMWA賞最優秀長編賞最終候補作)ではあるけれど、わたしから見ればマーシ・レイボーンはなかなか難しい主人公だ。共感できる部分はあるものの、素直には褒めにくい。技術的には、前作では相棒ヘスの視点からも描かれており、それがバランスをとっていたのだが、本編では一人称ではないものの、つねにマーシの視点で描かれているが、それがちょっとつらい!
前作のヘスもそうだったが、本編でもとても印象的な人物が登場する。相棒をつとめるポール・サモーラ。わたしが男ということもあるのだろうが、T.ジェファーソン・パーカーはやはり男を描かせた方がうまい。
サモーラは難病に苦しむ妻を看病しながら仕事を続けるが、結局、妻をなくす。サモーラにむかってマーシは語りかける。
「心は傷ついた箇所こそ、一番よく治るのよ。忘れないでね」
いろいろな苦難を背負っているマーシならではの、そして、まさにパーカーの真骨頂を示しているセリフだろう。
(2005.03.06)
| 書名 | レッド・ライト |
| 作者 | T.ジェファーソン・パーカー |
| 翻訳 | 渋谷比佐子 |
| 出版社 | 講談社 |
| ISBNコード | 4-06-275000-7 4-06-275001-5 |