アンドリュー・テイラーの『天使の背徳』は壮大な三部作の第二作目にあたる。前作『天使の遊戯』は現代が舞台。連続誘拐事件は解決するものの、犯人のエンジェルの意外な血筋が明らかにされ物語は終わっていた。そして本編『天使の背徳』は1970年に遡る。
ロンドン郊外で牧師を勤めるデイヴィッド・バイフィールドは偶然知り合ったヴァネッサと結婚をする。穏やかな新生活にみえたが、すこしづつ歯車が狂い始める。娘ローズマリー、友人から預かった少年マイケル・アップルヤード、近くの邸宅に越してきたクリフォード兄妹、周囲の人々を巻き込んで事件が起きる・・・。
ささいな日常の出来事の積み重ねによって生じる、小さな行き違い、芽生える憎悪、因縁を描いて、実に濃密な世界をつくりあげている。その手腕はたいしたものでしょう。とは言え、ミステリらしい事件は、最後の五十頁だけ。それでも興味を持ちながら読むのは、前作で喉に魚の小骨がささったような終わり方をしているせいだ。やはりシリーズを通した面白さに重点があり、本編も第一作『天使の遊戯』を読んでいなければ、その興味は十分の一といって良いだろう。
『天使の遊戯』でエンジェルとなる人物も登場してくる。実はデイヴィッドの奥底にある願望をエンジェルが実行しているという構図を意識しているのは判るのだが、なぜエンジェルが殺人にまではしるかについて納得のできる説明は無い。また、デイヴィッドの過去についてほのめかされており、これがきっと三作目のポイントになるのだろう。でも、三作読んでほんとうにスッキリするのだろうか? わたしは少し不安になっている。
さて、『天使の背徳』から紹介するのは、デイヴィッドの妻となるヴァネッサの言葉。
「欠点を取り除いたら、人間なんてほとんど何も残らないわ。少なくとも、おもしろみのある部分はね」
(2005.01.30)
| 書名 | 天使の背徳 |
| 作者 | アンドリュー・テイラー |
| 翻訳 | 越前敏弥 |
| 出版社 | 講談社 |
| ISBNコード | 4-06-274975-0 |