パトリシア・コーンウェルの検屍官シリーズの13作目『痕跡』。いい加減に、読むのを止めようと思いながら、書店に並んだのを見て、ついつい買ってしまった。最近のコーンウェルの作品は、この繰り返しですね。そして、可愛さあまって憎さ百倍はおおげさですが、長く親しんだシリーズだけに、どうしても厳しい評価になってしまいます。前作の読後にも同じことを書いたのだが、未解決の狼男シャンドンの件に決着をつけて、はやくシリーズの幕を引いたほうが良い。読むに忍びないんだの。
ケイ・スカーペッタはバージニア州の検屍局長を辞して、法医学コンサルタントをしていたが、後任の検屍局長ジョエル・マーカスから死因不明の少女の検屍について協力を依頼される。久しぶりにリッチモンドの地を踏んだスカーペッタだったが、その事件にはなぜかFBIもからみ、助勢をかってでたスカーペッタは手ひどい扱いを受ける。そして、その頃スカーペッタの姪、ルーシーを狙う怪しい影が迫っていた。
評価が辛らつになるのには、読みながら、何となく居心地が悪い感覚があって、それが影響しているのだと思うのです。コーンウェルは自分が造形したキャラクターをかなり突き放して見ているように感じる。いや、むしろ人間という生き物にかなり絶望しているように受け取れる。そんなザラザラした感覚が先立ってしまって好きになれない。以前はこんなことはなかったのですが。
スカーペッタはリッチモンドに戻るのだが、それ自体スカーペッタらしからぬ軽率さだと思うし、マリーノに降りかかる災難も、なぜこんな挿話が必要なのか理解に苦しむ。そして、ルーシーの人を見る目はあてにならない。あれほど才能にあふれ、過去にも同じ間違いをしておきながら懲りないなあ。
てなわけで、辛口になってしまいましたが、褒めておきたいのは文庫の文字が大きいこと。手元にある講談社文庫と比較してみると、通常は一ページに17行だが、本書は16行。ファンもまたコーンウェルと一緒に歳を重ねたことへの配慮でしょうか。
(2005.01.09)
| 書名 | 痕跡 |
| 作者 | パトリシア・コーンウェル |
| 翻訳 | 相原真理子 |
| 出版社 | 講談社 |
| ISBNコード | 4-06-274947-5 4-06-274948-3 |