ジリアン・ホフマンのデビュー作『報復』です。「P・コーンウェルも裸足で逃げ出す」というコピーですが、毎年12月に新作が翻訳されるコーンウェルを引き合いに出すのは相当意識的ですね。実際、コーンウェルの最新作『痕跡』も出されており、そちらも読み終わっていますが、すくなくとも『痕跡』とだけ比較すれば、ジリアン・ホフマンの『報復』に軍配はあがるだろう。
フロリダ中を震撼させた連続殺人鬼キューピッドが、ある偶然から逮捕された。その裁判を担当することになったのは女性検事補C・J・タウンゼントだったが、予審でキューピッドの声を聞いたタウンゼントは愕然とする。12年前にニューヨークで彼女をレイプしたマスクの男の声だった。そのレイプ事件が出訴期限を過ぎており、フロリダでの連続殺人で何としても有罪を勝ち取ろうとするタウンゼントだったが、キューピッド自身もタウンゼントの素性に気がつく。そして、彼の逮捕のきっかけが、ある密告であったことが判明し・・・。
ミステリ・ファンであれば、この先の展開は予想がつくし、案の定の結末となる。それでも読ませるのは作者の力量でしょう。主人公の恋愛模様やクライマックスの真犯人との対決まで多様な側面をそつなく描いています。キューピッドとして逮捕されたレイプ犯にどんな判決が待っているのか?、そして連続殺人の真犯人は? といった興味もあるが、過去の悪夢と戦いながら裁判に臨む、けなげな主人公タウンゼントがいい。
ただ、きわめて個人的な体験と事件が結びついた設定だけに、シリーズ化は難しそうです。むしろ、被告側弁護人として登場するルアド・ルビオあたりを主人公にして二作目をという手はありそうですが、それはそれでリチャード・ノース・パタースンと同じ手口となりますね。
さて、アメリカの裁判制度は日本のそれとはかなり趣が異なるのですが、それを示す警句を作中から紹介しておきましょう。
セント・ジョンズ大学の刑法学教授が以前、指摘したように、検察側はその気になればハム・サンドイッチだって起訴できるのだ。
(2005.01.03)
| 書名 | 報復 |
| 作者 | ジリアン・ホフマン |
| 翻訳 | 吉田和子 |
| 出版社 | ソニーマガジンズ |
| ISBNコード | 4-7897-2416-6 |