今週紹介するのはクリントン・マッキンジーの『コロラドの血戦』。著者クリントン・マッキンジーは地方検事補のキャリアもあり、なかなか多彩な趣味の持ち主のようだが、そうした経験もこの作品で活かされている。
ワイオミング州で麻薬捜査官を勤めるアントニアオ・バーンズはロック・クライミングを行い、一家の絆を確認するために集まった渓谷でトラブルに巻き込まれる。リゾート施設の建設を企てる開発業者と環境保護団体が対峙するなかで、環境保護団体のメンバーの一人が惨殺され、兄ロベルトが容疑者として逮捕される。町に隠然たる力をふるう開発業者の意を受けた保安官の不当な逮捕だった。兄の無実を証明するために、環境保護団体のリーダー、キム・ウォルシュと共に、真相を知る被害者の恋人を捜すアントニオだったが、真犯人たちもその後を追っていた・・・。
本書の帯に「リーガル・アクション・スリラー」とあるが、リーガルというのは的確ではない。確かに予備審問の法廷シーンはあるものの、徹頭徹尾冒険小説と言って良い。悪い奴ははっきりしており、湖畔の洞窟からの脱出や渓谷での夜間のロッククライミングなど、サバイバルのための戦いが続く。
ただし、そうした表面を取り払った根底には家族というテーマが横たわっている。米国空軍の要職についており、家族より仕事を優先する父親。家族思いでありながら、激情を抑制できずに問題を起こす兄ロベルト。麻薬捜査官という職業ながら、どこか兄とおなじ狂気が自分にも流れていることを意識する27歳の主人公アントニオ。問題を抱える一家がこの事件によって絆を取り戻す物語でもある。そして、それぞれに見せ場が用意されている点も面白い。なかでも、アントニオが飼っているオソという犬の活躍は読者が溜飲を下げるのに一役買っている。
どうやらシリーズ化されており、著者は5作目を執筆中とのこと。まずまずの冒険小説の登場と言ってよいでしょう。
さて、アントニオの父親の言葉を最後に紹介しておきましょう。
「戦うに値するものはふたつある。勝ち取れるものと、死ぬ価値があるものだ」
(2004.12.12)
| 書名 | コロラドの血戦 |
| 作者 | クリントン・マッキンジー |
| 翻訳 | 熊谷千寿 |
| 出版社 | 新潮社 |
| ISBNコード | 4-10-215041-2 |