ジム・フジッリの『NYPI』です。「ロバート・B・パーカーとハーラン・コーベンが瞠目」なんてコピーが帯に書いてあって、ファン心理をたくみについている。わたしなんか思わず義務感から手にとってしまいました。
PIとはPrivate Investigatorの略で、さしずめ私立調査員とった意味でしょうが、そんないい方が一般的にあるわけではない。本編の主人公テリー・オアは、あくまでPrivate Detective(私立探偵)と一線を画し、自らをPrivate Investigatorと称している。しかし、それは妻と息子の死の原因となった異常者を捜すために私立探偵をしていると周囲に思われるのを避けるためであって、実際にやっていることはまさに私立探偵である。そして、そのテリー・オアが周囲で発生する事件に首を突っ込むという設定で物語は進む。
テリー・オアの本業は歴史小説の作家なのだが、学生時代にはバスケットボールの選手だだったという経歴で、必要に応じて強面(こわおもて)の一面も使い分けることができる。一人残った娘の世話をしているようで、その実、精神的には娘の存在に大きく依存している。そして亡き妻へのつづる形式の日記が時折はさみこまれており、多様な側面を持っている。
それだけにテリー・オアの像がはっきとわたしの頭の中に描ききれない。それだけ複雑なキャラクターと言ってよいだが、えり好みを言えば、もっと判りやすい、ストレートな主人公の方が好みですね。本国ではすでに四作まで出版されているようだが、評価は第二作を読むまであずけておきます。
なお、日頃翻訳にたいして注文をつけることはないのだが、今回は気になる点があった。
娘の名前はギャブリエラ、かつての大統領はローズヴェルト、そしてバスケットのティームと、かなり原音を意識した表記を試みている。ですが、これはやりすぎでしょう。日本語だって、話し言葉と書き言葉は別物で、話し言葉の音を忠実に書き言葉にするわけでない。ましてや英語をカナ表記にするのに、ティームと書いてみせるつまらないこだわりは捨てたほうが良いだろう。だいいち、ギャブリエラなんて、日本語の感覚としては音としてきたない、せっかくのかわいい少女が台無しだと思いません?
さて、いつものように最後にセリフをひとつ紹介しておきましょう。テリーの知り合いの刑事の言葉です。
「わたしはガイシャには感情を向けない。生きている人間のためにとってあるんでね」
(2004.11.28)
| 書名 | NYPI |
| 作者 | ジム・フジッリ |
| 翻訳 | 公手成幸 |
| 出版社 | 講談社 |
| ISBNコード | 4-06-274928-9 |