死刑判決


『推定無罪』で一躍その地位を築いたスコット・トゥローの『死刑判決』。評論家の北上次郎さんによればリーガル・サスペンス界の東の横綱というだけあって、単なる法廷ミステリを超えた重厚な小説となっている。まあ、文庫本のくせに各巻1200円という価格にもびっくりしましたが。そう言えば、紙質もいつもと違うようで、これが嵩高紙と呼ばれる物でしょうか。

深夜のレストランで三人が惨殺され、冷凍庫詰めにされた10年前の殺人事件で死刑囚となっているロミー・ギャンドルフ。しかし、彼は犯人ではないと主張する新たな証人が現れる。ロミーの公選弁護人に任ぜられたアーサー・レイヴンは真相を求めて奔走する。しかし、その事件を取り調べた刑事と検事、そして判決を下した判事、それぞれの人生がこの事件に翻弄されることになる。

死刑執行がせまった死刑囚が実は無実かもしれないという、良くある設定を使いながら、その事件に関わった四人の人生を中心に描いている。事件の真相は四人の努力とは無関係に、その本当の姿を表すことになる。その事件に四人が翻弄されると言ったほうが正しいだろう。従って、派手は法廷ミステリを期待すると裏切られることになる。とは言え、そこは『推定無罪』の作者、意外な真相を用意しているに違いないと思って読むのだが、肩透かしを喰らう。四人の人生が焦点といえば、そうなのだが、いまひとつそのテーマが明確ではない。事件の真相をに対する関心で、800ページ近くある大作を難なく読ませるのだが、決め手にかけると言って良いでしょう。まあ、横綱だってたまには取りこぼしがありますからね。

ただ、決して平坦ではない四人の人生が物語の中心だけあって、かなりクールな警句が多く登場する。曰く、

人生はいいものだ。長く続かないところが。

権力が腐敗しているといわれるが、その言葉は邪悪なものにも同じように当てはまった。邪悪もまた腐敗していた。

それは警官人生における哀しい教訓のひとつだ。つまり、人は予想以上にいい人間であるより、予想以上に悪い人間である可能性のほうがはるかに高い。

(2004.11.14)


書名 死刑判決
作者 スコット・トゥロー
翻訳 佐藤耕士
出版社 講談社
ISBNコード 4-06-274866-5
4-06-274867-3

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