ロンリー・ファイター


前作では「Fade Away」という原題に対して邦題は「カムバック・ヒーロー」だった。今回は「Backspin」に対して「ロンリー・ファイター」である。随分と飛躍がある。「ロンリー・ファイター」はスポーツエージョント、マイロン・ボライターを主人公にすえたシリーズの4作目である。1作あたりでは随分と軽い読み物の印象があったが、前作あたりからなかなか渋いストーリーになってきた。毎回異なるスポーツが題材なのだが、今回はゴルフである。「Backspin」という原題はゴルフ用語にもあるが、それならと過去の三作も調べたが、下の表のような関係。

原題
邦題
舞台となるスポーツ
1 Deal Breaker 沈黙のメッセージ フットボール
2 Dropshot 偽りの目撃者 テニス
3 Fade Away カムバック・ヒーロー バスケットボール
4 Backspin ロンリー・ファイター ゴルフ

二作目の「Dropshot」はテニスでも使う言葉だが、常に各々のスポーツの用語をタイトルにするといった仕掛けはなさそうですね、残念!

今回はゴルフの全米オープンに出場している選手の息子が誘拐され、ボライターはその犯人を探し出すことを依頼される。一方で全米オープンの勝負はプレーオフに持ち越される。ご存知のように全米オープンのプレーオフはサドンデスはなく、翌日1ラウンドする方法だ。しかしそのプレーオフの日の早朝、片方の選手が射殺体で発見される。もし、これが本当だったら、大変な騒ぎですね。
こんな事件に、頼みの綱は持ち前の軽口だけ(これは本の腰巻きのうたい文句)のボライターが挑む。ただ軽口をたたくのはボライターだけでなく、彼をとりまく相棒のウィンや秘書のエスペランサも負けてはいないので実ににぎやかだ。有望な新人ゴルファー、クリスピンのエージェントになることを目論むボライターとウィン会話。

「じっさいの話、クリスピンはとても利発な若ものだ」彼はつづけた。「ただ、残念なことに、すべてのエージェントが盗賊で、政治に携わる売春婦と同程度の道徳観念しか持っていない、と信じている」
「本人がそういったのか?政治に携わる売春婦、と?」
「いや、その部分はぼくが考えた」ウィンは微笑した。「かなりいい表現だろう?」

それにこの三人は昔のテレビドラマをネタにクイズを出しあったりする習慣がある。

「それと、元気もののドクター、ザカリー・スミスも忘れがたい」ウィンは言い添える。
「テレビにシリーズ番組に登場した、最初のゲイ・キャラクターだ」
「陰謀好きなスパイ、臆病もので小児性愛の気配もあったわ」そういって、エスぺランサはかぶりをふった。「あの男がゲイ解放運動を二十年あと戻りさせた」

これでピンとくるのは、わたし同様、中年以上の方だと思うが、ザカリー・スミスは日本の放送ではザックレー・スミスという名前でした。そう「宇宙家族ロビンソン」です。でも、ゲイだったのかな。ゲイなどという言葉も知らない子供の頃なので、そんな見方をした記憶はないけれど、印象に残るキャラクターであったのは事実です。

前作ではボライターがバスケットボールの選手を断念する過去の事件の真相が明るみに出るという付録があったが、今回はウィンとその母親との確執の原因が明かされる。それとても冗談のネタになるのだが・・・。

マイロンが誘拐について説明しおえると、エスペランサはまず驚いたようにいった。「ウィンにも母親がいるの?」
「うん」
短い沈黙。「わたしの”悪魔の卵から生まれた”説が否定されたわ」
「ハハ」
「あるいは、”大失敗した実験から生まれた”説が」
「きみは、わたしの助けになっていない」


書名 ロンリー・ファイター
作者 ハーラン・コーベン
翻訳 中津悠
出版社 早川書房
ISBNコード 4-15-170954-1