ラストマン・スタンディング


デイヴィッド・バルダッチの作品が日本で紹介されるのは2000年の『運命の輪』以来となる。実際には一年一作のペースでエンターテイメント性の高い長編を上梓しているのだが、人気が出ないせいか日本では翻訳されることが少ない。本編『ラストマン・スタンディング』は”最後の生き残り”といった意味だが、FBIの人質救出チーム(HRT)でひとり生き残ったウェブ・ロンドンを主人公としたサスペンス小説だ。

大掛かりな麻薬取引が行われるとの情報を得たFBIは、組織の金の出入りを把握している会計士を証人として確保しながら、一味を一網打尽にするために、ウェ・ロンドンたち人質救出チーム(HRT)を派遣する。しかし、それは巧妙に仕組まれた罠だった。チームを待っていたのは無人の銃座に据え付けられた機関銃の列だった。襲撃の直前に突然からだが硬直し、動けなくなったウェブの目の前で、彼をのぞいてチームは全滅してしまう。仲間を裏切ったのではという疑いのまなざしにウェブは耐えるが、相次いで判事や検事が殺されるという事件が発生する。人質救出チームも含め関係者はすべて過去の小学校人質立てこもり事件の関係者であることが浮かび上がってくる。ウェブは真相を突きとめるために立ち上がるが・・・。

こうして、小学校人質立てこもり事件にまつわる復讐劇を中心にすえながら、ウェブの実父や義父にまつわる秘密も解き明かすという構成になっている。事件の構造はなかなか複雑で、強引な展開も見えるので、もう少しすっきりさせた方がよかったろうが、真相をめぐって最後まで興味深く読ませる。

そして、きわめてマニアックな描写が読者をうならせる。ウェブは暗視ゴーグルを利用するときに、あえて片目を閉じる。なぜなら、ゴーグルを外したときに、それぞれの目に明るいオレンジの玉しか見えなくなり、自らの視覚を失うことになるからだ。こういうところは、単に映画を見ているだけでは判らない点ですね。また、平均勤続年数が5年という、尋常ならざるHRTに身をおくような男たちの友情や使命感、そして強迫観念や苦悩などもしっかり描かれている。

そんなウェブの厳しいセリフ。

「いいか、ほんとのところは、おれはだまされ、はめられ、一杯食わされた。いい方はなんでもいい。おれは裏切り者じゃないが、へまをした。この商売じゃ、それは寝返るのと大差ない」

(2004.08.15)


書名 ラストマン・スタンディング
作者 デイヴィッド・バルダッチ
翻訳 熊谷千寿
出版社 小学館
ISBNコード 4-09-405472-3

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