本書を手にとった読者は忍耐力と辛抱強さを試されることになるが、それはやがて報われる。どうか269ページまでは我慢して読んでください。この『女検事補サム・キンケイド』はアラフェア・バークの処女作で、オレゴン州ポートランドの女性検事補サマンサ・キンケイドを主人公とした法廷ミステリだが、シリーズ化はまだのようだ。著者アラフェア・バークは検事補の経験があり、現在はロースクールで刑法を教えているという。法律のほうは専門家だが、小説はデビュー作ということもあって少し粗が目立ちます。
13歳の少女ケンドラ・マーティンがレイプされ、あやうく殺されそうになるが一命を取り留める。警察は彼女の証言から容疑者としてフランク・デリンジャーを逮捕し、検事補サマンサ・キンケイドが起訴を担当することになる。ケンドラの証言だけが頼りとはいうものの、比較的簡単な事件と思われた。しかし、折しも、警察には自らの犯行をほのめかす手紙が送られてくる。そこには数年前の事件で、すでに犯人の死刑が確定している殺人事件についても言及されていた・・・。
読み終わったあとにはなかなか面白かったと思わせてくれるのだが、途中ではどうなることやら、放り出そうと思ったぐらいだ。思わぬ展開をみせてからはなかなか面白いのだが、そこに行き着くまでがいかんせん長い。証言をさせる被害者に心を開かせようとする試み、公判前の刑事たちとの証言のすり合わせなど、検事補の経験のある著者ならではの
細かな点も書き込まれているのだが、惜しむらくは、これが魅力というよりは、物語のスピード感を削いでいるように感じられるのだ。
先に述べたように確かに269ページ以降は、こういう展開もあったかと思わせるのだが、それならば、もう少し前半の伏線に工夫があっても良かろう。作者はもともとキャラクターに重点をおいていたのに、途中から心変わりをして物語性を追求したようにも思える。女性らしからぬ、シニカルな独白など面白い点もあるので、次回作に期待しよう。
さて、今回紹介するのは、作者の経験に基づいたと思える主人公の一言。
ひとつの部屋に居合わせる警官と検事補の数が増えれば増えるほど、口にされる卑語の数と種類は幾何級数的に増えていく。それはもう動かしがたい事実である。
(2004.07.11)
| 書名 | 女検事補サム・キンケイド |
| 作者 | アラフェア・バーク |
| 翻訳 | 七搦理美子 |
| 出版社 | 文藝春秋社 |
| ISBNコード | 4-16-766164-0 |