エヴァーグレイズに消える


作者のT・J・マグレガーはすでに二十年近いキャリアのあるミステリ作家だが、もっぱら超常現象などのからんだのミステリを書いてきたせいもあって、わたしには縁のなかった作家だ。この『エヴァーグレイズに消える』は2003年度アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀ペイパーバック賞を受賞した作品だが、やはり奇想天外な設定だ。

タウンゼント一家はフロリダの湿地帯エヴァーグレイズへキャンプにでかけるが、道に迷い奇妙な村に出くわす。そこは秘密裏に進められるプロジェクトの実験場で三人はそこで事故に巻き込まれる。秘密を守ろうとうする謎の集団が三人を捕らえようと追う。しかし、実は三年前にも同じように事故に巻き込まれた夫婦が存在し、事態は意外な方向へ向かうのだった・・・。

なにも明かさずに感想を述べるのが難しい作品だ。新聞の書評欄などでも、ある程度ネタをばらしていたので、小生も少しは書いても良かろう。上で述べた実験とは人間や物質を透明化するプロジェクトなのだ。もっとも原題の"Out of Sight"がそのヒントになっているし、そういう目で見れば邦題の『エヴァーグレイズに消える』も意味深ですね。

しかし、肝心の透明化について深く考えて読んではいけないだろう。食物は食べた直後は見えるが、消化されると見えなくなるという設定なのだが、実際には口にした物すべてが消化されるわけではないし、排泄物はどうなるのかなんて理屈を考え出すとわからないことだらけだ。まぁ、それを咎めるのは野暮というものでしょう。

ただ、いかんせん平板な展開で、単調という印象は残る。結末のつけ方もかなり中途半端だ。本当はもっと先を書くつもりではなかったかという気がする。追いつ追われつのアクション物にするとか、熱線追尾センサー等のハイテク装置を持った集団から透明という以外には何の武器のない人間が知恵を使って脱出する物語にするなり、その色合いを鮮明にした方が良かったろう。

(2004.04.18)


書名 エヴァーグレイズに消える
作者 T・J・マグレガー
翻訳 古賀弥生
出版社 早川書房
ISBNコード 4-15-174501-7

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