マンハッタン狩猟クラブ


ジョン・ソールの『マンハッタン狩猟クラブ』を紹介しよう。このジョン・ソール、わたしにとっては初めての作家なのだが、すでに二十数年間のキャリアがある作家だ。もっぱらモダン・ホラー系の読み物を書いていたので、わたしの視界に入ってこなかったのも当然ですね。そのジョン・ソールが趣向を変えて発表したサスペンスがこの『マンハッタン狩猟クラブ』だ。

ジェフ・コンヴァースはニューヨークの地下鉄で浮浪者に襲われていた女性を助けようとして逆に犯人と間違われ、逮捕されてしまう。有罪が確定し、刑務所に送られる途中に車が事故に巻きこまれ炎上するが、事故のさなか何者かに拉致されたジェフが連れて行かれたのはマンハッタンの地下鉄構内の奥深い所だった。そこで命を賭けた脱出ゲームが始まった。ジェフの相棒は殺人犯ジャガー。追うのは武装したの正体不明の男たち。一方、その頃ジェフの父親キースは警察に見せられたジェフの遺体に不審を抱き、ジェフの恋人ヘザーとともにジェフの行方を追っていた・・・。

本の帯に<人狩り>がテーマと書いてあるが、狩る者と狩られる者との攻防という観点では少し物足りない。スピーディな場面転換やマンハッタン狩猟クラブの意外な真実など、そつなくまとめているものの、<人狩り>としての要素はクライマックスのごく一部で、盛り上がりに欠ける。なぜなら、マンハッタンの地下そのものが本書の主人公だからだ。迷路のようにはりめぐらされたトンネルと深い闇、時折遠くで聞こえる地下鉄の線路のきしむ音、そしてそこで暮らす人々の生態。華やかなマンハッタンの地下にあるもう一つの世界こそがジョン・ソールの描きたかったもので、その意味では本書は成功してる。

ジェフが昔言ったことばが、不意に頭に浮かんだーー暗闇の中にいて光の中をのぞくほうが、逆よりもはるかに安全だ。

無論、物理的にはその通りなのだが、ジェフが垣間見た異なる二つの世界、マンハッタンとその地下の世界のことを比喩してもいる。


書名 マンハッタン狩猟クラブ
作者 ジョン・ソール
翻訳 加賀山卓朗
出版社 文藝春秋社
ISBNコード 4-16-766159-4

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