探偵家族


マイクル・Z・リューインの『探偵家族』です。本書は97年に早川書房のポケミスとして出版されたものですが、このたび文庫化されたので手に取りました。原題は"Family Business"で、同名の映画のほうは泥棒一家の話だったが、こちらは私立探偵を家業としている。リューインといえば『沈黙のセールスマン』に代表されるアルバート・サムスンのシリーズが有名だが、このイギリスのバースに居を構えるルンギ一家の物語もなかなかのものだ。とかくエスカレートする連続殺人など派手なミステリが主流の中にあって、一服の清涼剤的な佳作といってよいでしょう。

親子三代で私立探偵を営むルンギ家をひとりの主婦が訪ねてくる。最近夫が何かに気を取られているようなので、何が原因か調べて欲しいというものだ。女性問題かとも思われたが、とりあえず次男アンジェロがその夫を尾行することになる。一方で若い女性から自分のことをバーで尋ねまわっている不審な男についての調査も頼まれる。一見地味な二つの事件が、やがて過去の殺人事件へとつながっていく・・・。

この探偵事務所の経営者で一家の長である親爺さんを筆頭に、個性的な面々がそれぞれに活躍するが、なんと言っても、全編をながれるとぼけた味、そこはかとないおかしみが本書の特長でしょう。とんでもないどんでん返しなど用意していないが、変哲のない調査から思わぬ殺人事件の真相が明らかになる展開も作者の確かな芸が感じさせる。そうそう、それに『おやじの細腕まくり』なんてエッセイまでものにする翻訳の田口俊樹さんのタッチも本書にぴったりだという事を忘れてはならない。

さて、このルンギ家では家族全員で食事をする曜日が決まっているのだが、その食事シーンにおける親爺さんのセリフを紹介しておきましょう。

「このサラダ・ドレッシングはあの例の低コレステロールとかいう馬のしょんべんか?」

わかるなぁ。健康志向かなにか知らないが、カフェインの入ってないコーヒーとか、アルコールの入ってないビールとか、親爺さんのいうようにしょんべんみたいな飲み物がはやるなんてどうかしてるよ。


書名 探偵家族
作者 マイクル・Z・リューイン
翻訳 田口俊樹
出版社 早川書房
ISBNコード 4-15-078412-4

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