黒蠅


パトリシア・コーンウェルの検屍官シリーズ最新刊『黒蝿』です。わたしがコーンウェルの友人なら、彼女に次のような手紙をしたためることになるでしょう。著者本人への手紙だからかなり際どいネタばれもあるので要注意です。

ねぇ、パトリシア。君の最新作『黒蝿』を読ませてもらった。三年ぶりの検屍官シリーズなので前作がどんな結末か、うろ覚えだったのでストーリーを追うのに少し苦労したよ。今までケイの一人称表現だったのを三人称の視点にしたり、年齢設定を変えたり、シリーズも長くなると大変だなぁと思いながら読んでいたのだけれど、物語の後半にはびっくした。君は知るはずもないけれど(そして日本でも若い人は知らないと思うけれど)、昔日本で花菱アチャコというコメディアンがいて、彼の有名なセリフを思い出してしまったよ。「無茶苦茶でござりまするがな」というのだけれどね。パトリシア、常々君の才知と美貌には敬意を抱いているぼくだが、今回はいくら何でも感心しない。あの彼を生き返らすのもずいぶん乱暴だと思うけれど、まぁそれは許すとしよう。でもその彼とルーシーにあんな事をさせてはいけない。法を超えた彼らの行為を物語に持ち込むのは、同時多発テロ以降のアメリカの空気の変化が君にも影響しているようで心配だ。

ぼくたち、日本のファンはたとえ、どんな内容であろうと、この検屍官シリーズを途中で放り出すわけにはいかない。最後まで付き合うつもりだ。でも、君に一つ提案があるんだ。この検屍官シリーズは次回作で最後にしようよ。それもあまり間隔をあげずに、早い時期に出そう。ストーリーはここまで来たら、少々乱暴でもかまわないと思うから、決着をつけようよ。そろそろ、ケイ、ルーシー、マリーノ、それにベントンの四人を君の呪縛から解放してあげてもいいころだと思うよ。


書名 黒蠅
作者 パトリシア・コーンウェル
翻訳 相原真理子
出版社 講談社
ISBNコード 4-06-273907-0
4-06-273908-9

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