今回はG・M・フォードの『憤怒』です。新聞記者フランク・コーソを主人公とするシリーズ物の一作目にあたる。フランク・コーソの容姿はスティーヴン・セガールに似ており、セガールばりに格闘技や射撃の心得もあるという設定だ。まさか、セガールによる映画化を念頭に置いたわけではないでしょうが・・・。
連続レイプ殺人の犯人として逮捕され死刑執行が近づいたウォルター・ハイムズ。彼の有罪を決定づける証言をした女性がシアトル・サンの記者フランク・コーソを訪ね、その証言は偽証だったと告白する。冤罪を確信したコーソはそのスクープをかかえて、真犯人の捜査に乗り出した。しかも、その頃、シアトル市警はハイムズと同様の手口による殺人事件が発生していたことをひた隠しにしていた。ハイムズの死刑執行まであと六日。はたしてコーソの調査のさきに何が待っているのか・・・。
こういう設定のミステリは過去にも何作かあるのだが、死刑囚は無実で、真犯人が見つかるという展開になるに決まっている。となると、どう読ませるかという一点にかかってくることになるだが、死刑執行まであと何日というタイムリミットの使い方はいま一つで、緊迫感が盛り上がらない。しかし、この『憤怒』では真犯人が見つかったあとに、もう一つのひねりを加えており、それが本作の特徴といって良いでしょう。
フランク・コーソはかつてニューヨーク・タイムズの花形記者であったのが、ある政財界の大物に関する記事が原因で、その地位を追われてシアトルで契約記者をしているという設定だ。そのスキャンダルがどんなものだったのか詳しくは語られていない。シリーズを追って少しづつ明らかになるに違いない。コーソを手伝う女性カメラマン、メグ・ドアティなどシリーズ物に欠かせない脇役も揃っている。
そのニューヨーク時代の顛末について語るコーソと証言を翻した女性との会話を紹介しておこう。
「金とプライドだな」しばらくして、コーソは言った。「相手はほんとうに危険な存在たるに十分なお金を持っていた。おれのほうはほんとうに愚かな存在たるに十分なプライドを持っていたということ」
「お金で幸せは買えないって、ママが言ってるわ」リーンは言った。
「ママはプライドについてはなんと言ってる?」彼は尋ねた。
「いつも言ってるわ。プライドが転落をもたらすって」
| 書名 | 憤怒 |
| 作者 | G・M・フォード |
| 翻訳 | 三川基好 |
| 出版社 | 新潮社 |
| ISBNコード | 4-10-202111-6 |