『死を啼く鳥』でデビューした英国のモー・ヘイダーの二作目『悪鬼の檻』です。前作では死体の胸に小鳥が縫いつけられているという猟奇殺人事件がテーマだったが、本作もかなり重たい。相当えぐいテーマを取り上げながら、単なるキワモノにおわっていないのは作者の力量だと思うが、好き嫌いは分かれるでしょうね。
親子三人の一家が何者かに襲われる。ピーチ夫婦は監禁され瀕死の状態で発見されるが、一人息子ローリは犯人に連れ去られる。そして警察の必死の捜査にもかかわらず、ローリは遺体で発見される。ロンドン警視庁重要犯罪捜査隊のジャック・キャフェリー警部は犯人の手掛かりを求めてピーチ夫妻に事情聴取をおこなうが、なぜか二人とも口が重たい。やがてジャックは小児性犯罪者のネットワークから手掛かりを得るが、犯人は次の被害者に目をつけていた・・・。
ミステリー部分だけ抜き出すと、かなり巧妙な仕掛けになっている。早い段階で真犯人らしき人物が登場するのだが、一筋縄ではいかない。読者をミスリードするような罠が仕掛けてあるから要注意。『死を啼く鳥』でもその片鱗は見せていたが、さすがにうまいものだ。にもかかわらず、手放しで褒められないのはこの小説の持っている暗胆たる雰囲気のせいだろう。
ジャック・キャフェリー警部の兄ユーアンが幼い頃に失踪した事件については前作でも触れられているが、この『悪鬼の檻』では事件が小児性犯罪ということもあって一層重くジャックにのしかかってくる。また、恋人レベッカも前作のトラウマを引きずり苦しむ。犯行の様子や性描写も含めてかなり濃厚で、先へ読み進のがつらい気持ちになり、心から楽しむという具合にならない。好き嫌いが分かれるという由縁です。
ところで本題とまったく関係ない話だが、本編で登場するある女性に関する表現をお教えしましょう。
「彼女って典型的な女よ、ジャック。女そのもの。ルームミラーはうしろの交通をチェックするためのものじゃない。とーんでもない! 口紅をチェックするためのものなのよ。まったく、信じられない」
妙に懐かしい表現ですね。一昔前のハリウッド映画に登場するコケティッシュな女性を思い出します。
| 書名 | 悪鬼の檻 |
| 作者 | モー・ヘイダー |
| 翻訳 | 小林宏明 |
| 出版社 | 角川春樹事務所 |
| ISBNコード | 4-7584-3058-6 |