コンスタントに面白い作品を発表しているマイクル・コナリーの『夜より暗き闇』を紹介しましょう。おなじみロサンゼルスのハリウッド署刑事ハリー・ボッシュを主人公にしたシリーズ物です。昨年早川書房から出版された『シティ・オブ・ボーンス』の結末で大きな転機を迎えたはずなのにおかしな展開だと思いながら読み始めたが、あとがきを見て納得。翻訳作品にありがちなことではありますが、この『夜より暗き闇』が『シティ・オブ・ボーンス』の一作前の作品にあたる。
元FBI心理分析官のテリー・マッケイレブは心臓病が原因ですでに引退した身だったが、旧知の刑事から捜査協力を依頼される。心配する妻をよそに、捜査に協力したテリーはその殺人現場が中世の画家ヒエロニムス・ボッシュの絵画に見立ててあることに気付く。そして被害者と刑事ヒエロニムス・ボッシュ(通称ハリー・ボッシュ)の間に接点があることを発見する。はたして、本当にこの事件にハリー・ボッシュが関係しているのか・・・。
テリー・マッケイレブは『わが心臓の痛み』の主人公だから、二シリーズの主人公が登場するという豪華キャスティングだ。内容的にはやはりハリー・ボッシュ・シリーズと言って良いと思うが、テリーの目線を通してハリーを描くという設定になっており、少し違った印象が残る。
マッケイレブはボッシュには撓めたバネのような印象がつねにあったことを思い出した。いついかなるときも、あるいは理由を問わず、ボッシュはレッドゾーンにアクセルを踏むことができる人間である気がした。
善と悪の境目を歩いているようにも見えるハリー・ボッシュをうまく言い表していると思える。『シティ・オブ・ボーンス』でも刑事を勤めていたので、ハリーが犯人のはずはないので、おのずと真相は想像がつくのだが、その後にさらに隠された真相が暗示される仕掛けになっている。ここらは『シティ・オブ・ボーンス』の結末へも続く伏線ともいえるでしょう。さすがに達者なマイクル・コナリーらしく、面白く読ませてくれるが、このシリーズは今後かなりの波乱の見せる予感がします。
ところでコナリーはハリー・ボッシュという主人公を創造したときから、このストーリーを頭に描いていたのか? これが最大の疑問ですね。
| 書名 | 夜より暗き闇 |
| 作者 | マイクル・コナリー |
| 翻訳 | 古沢嘉通 |
| 出版社 | 講談社 |
| ISBNコード | 4-06-273793-0 4-06-273794-9 |