エリザベズ・ピーターズの『ベストセラー「殺人」事件』です。あとがきによれば本書は以前に徳間書店より「裸でご免あそばせ」というタイトルで1993年に出版されたものの改訳にあたる。本書でも活躍するジャクリーン・カービーが主人公のシリーズとしては四作目となる。
世紀の大ベストセラーといわれた「氷のなかに裸で」の著者キャスリーン・ダーシーが謎の失踪をとげてから七年。新しい執筆者による続編出版の話がまいあがる。ロマンス小説の作家であるジャクリーン・カービーは厳正な審査の結果、続編の執筆をすることになる。ジャクリーンは前作の雰囲気をつかみ、より良い続編書くをため、キャスリーンが暮らしていた田舎町に移り住む。しかし、ジャクリーンの創作活動を妨害するような事故が相次ぎ、やがて町の住人の一人が不振な死をとげる。ジャクリーンは事件の真相を追求するが、それは七年前の失踪事件の謎をも明るみに出すものだった・・・。
全体としては古典的な推理小説の雰囲気ですね。登場人物はみなゴシップ好きで、いろいろなヒントをジャクリーンに与えてくれる。そして、最後に主人公が関係者一同を集めて謎解きをし、思わぬ真相が明らかにされる。さすがに1989年度のアガサ賞を受賞している作品だけのことはある。ただ、7年前の失踪事件の真相で、読者をアッと言わせようとするとこの結末は必然的でもあるので、深読みの読者にとってはさほど驚きでないかもしれない。
本書の紹介に「本格ユーモア・ミステリー」とあるがドタバタ喜劇ではなく、かなりシニカルな笑いを笑いを含んでいる。そして、なによりも主人公ジャクリーン・カービーの個性的な性格が本書の魅力でしょう。実に小気味いい語り口で物語は展開する。出版業界のエージェントからの贈り物に対してはこんな具合に・・・。
金の房飾りのついたリボンがかけられたギフト用の派手な包み紙、中身はチョコレート。専門店でしか扱っていない高級品だが、残念なことにリキュール入り。お酒とチョコをいっしょにするなんて! 悪徳は別々のほうがいいに決まっているのに。
| 書名 | ベストセラー「殺人」事件 |
| 作者 | エリザベス・ピーターズ |
| 翻訳 | 田村義進 |
| 出版社 | 扶桑社 |
| ISBNコード | 4-594-03944-8 |