エンジェル・シティ・ブルース


ポーラ・L・ウッズの「エンジェル・シティ・ブルース」です。ポーラ・L・ウッズはデビュー作となる本書で、1999年のマカヴィティ賞最優秀新人賞を受賞しているが、相当歯ごたえのある、難しいミステリだ。事件そのものより、主人公の女性刑事シャーロット・ジャスティスの生き方が中心の展開だが、背景に人種問題をかかえているためかなり重たい物語となっている。

ロス市警の強盗殺人課のシャーロット・ジャスティス刑事は市内で発生した暴動を鎮圧するため、制服組と一緒に現場にかり出された。しかし、その暴動の最中、一人の黒人男性が殺害される。その被害者は十数年前にシャーロットの夫と娘を射殺した元黒人解放組織の幹部ルイスだった。ルイスへの憎悪を糧に生きてきたようなシャーロットだったが、事件の真相を突き止めようと捜査を開始する。

とにかく複雑な人種問題が根底にあって、人間関係をややこしくしている。シャーロット自身は黒人なのだが、黒人として肌の色は白いほうだ。そのことが彼女の立場を難しくしている。また、同じ黒人でも白人社会に同化しようとする者とそうでない者の考え方の対立。そのうえ、男性社会の警察組織で女性として生きるための軋轢。そんなこんなが盛り込まれており、肝心のミステリ部分は少しおろそかになっているようだ。これほど人種問題がクローズアップされていると、登場人物の肌の色がつい気になりますね。やはり外からは伺いしれない根深いものがあるのでしょう。

そして何よりもわたしが母の経験から学んだのは、アメリカでの生活が<色素階級制度>と呼ばれるゲームで、色によって打つ手が変わるということだ。黒なら、うしろへ下がる。茶色なら、その場で控える。黄色ならば、にこやかに。白なら、何でもありだ。

「黄色ならば、にこやかに」とは皮肉でしょうか。


書名 エンジェル・シティ・ブルース
作者 ポーラ・L・ウッズ
翻訳 猪俣美江子
出版社 早川書房
ISBNコード 4-15-174101-1