ホーカン・ネッセルの「終止符」。珍しいスウェーデン産のミステリだが、本書の解説によればテレビ映画化もされているほどの人気シリーズだそうだ。すでに十作が上梓されており、本書は二作目にあたる。講談社は昨年もやはりスウェーデンが舞台のリサ・マークルンドの「爆殺魔」を紹介していたが、最近北欧ミステリの開拓に熱心なのかしらん。
カールブリンゲンという小さな街で二件の殺人事件が続けて発生する。被害者はほとんど首を切り落とされており、メディアは犯人を「首切魔」と呼んだ。マールダム市警の刑事部長ファン・フェーテレンは長期休暇中だったが、捜査の応援にかりだされる。被害者の一人はヤクの売人、一方は地元の名士と何のつながりもなさそうな二人。被害者の背景を追う捜査陣だったが、操作は停滞したままだっが。その最中、ついに三人目の被害者が発生する・・・。
なかなかユニークな作品だ。なにしろ主人公ファン・フェーテレンはろくに捜査らしい捜査もせずに、地元警察の老署長とワインを飲みながらチェスをしているうちに事件が解決してしまったような印象がある。フェーテレン自身もこんなふうに独白している。
事件は突然、解決に向かっている。
彼がここに来て数日目で本能的に感じたように、勤勉な捜査活動から導き出された結果とは言えなかった。彼が予感した通り、解決は彼の頭の上に降ってきたようなものだ。ちょっと、妙は感じがするのは確かだ。ほとんど不当だと感じるほどに。だが、こんなふうに事件が終わるのは初めてではない。何度かこんあことはあったし、ずいぶん前に彼は学んでいた。道徳的精神が正しく報われない職業があるとすれば、それは警察官だと。正義の女神は、自分の尻を叩きながら働く警官よりも、寝転がって考えている警官をひいきにしているらしい。
確かに意外な真犯人が見つかり、その哀しい動機も明らかになるのだが、そこに至る推理の過程はかなり謎めいていて、なんだかしっくりしない印象が残る。ただ、読み返してみるとヒントが巧みに与えられており、あなどれないものがある。特に一緒に捜査にあたる女性警部ベアーテ・メルクの所在が不明となり、彼女が気づいた証拠を捜すくだりはなかなかの着想といって良いだろう。
主人公はすでに中年に達し、家庭的にはいろいろと悩みが多そうなのだが、そこらあたりは本編ではそれほど詳しく語られていない。そこらも判るようになれば、シリーズ物としての面白みも増すだろう。
| 書名 | 終止符 |
| 作者 | ホーカン・ネッセル |
| 翻訳 | 中村友子 |
| 出版社 | 講談社 |
| ISBNコード | 4-06-273751-5 |