ジャスミン・トレード


デニーズ・ハミルトンの「ジャスミン・トレード」です。著者はフリージャーナリストで、この作品がデビュー作だが、女性記者イヴ・ダイヤモンドを主人公としたこの物語はシリーズ化しているようだ。

巨大なショッピングセンターの駐車場で中国系の十代の少女が遺体で発見された。当初、カージャックに失敗した犯人に殺害されたものと見られていた。ロサンジェルス・タイムズの女性記者イヴ・ダイアモンドはこの事件をきっかけに中国系移民たちの生活に興味を持つ。殺された少女マリーナ・ルーの周囲を取材するうちに、少女の日記を偶然手に入れるが、何者かに盗まれてしまう。そして捜査担当の刑事が殺され、イヴ自身も命を狙われる。しだいに浮き彫りになる中国系移民の光と陰・・・。

主人公の女性記者イヴが取材をするうちに明らかになる、パラシュート・キッズの存在と彼等をとりまく環境が本書のテーマだ。パラシュート・キッズというのは、アジアからの移民で(主に香港、台湾)、両親が経済活動のために本国に帰国し、米国に子供だけで残された十代の少年少女のことだ。無論、経済的には恵まれた環境にあるのだが、違法行為を周囲に隠しながら孤独な生活をおくることになり、さまざまま問題を抱えているようだ。本書でも、こうしたパラシュート・キッズを取り込もうとする中国系犯罪組織の存在、また中国本土から騙されて米国に連れてこられ売春婦となった少女などが物語に巧みに織り込まれている。ちなみに本書のタイトル、ジャスミントレードとはこうした売春の意味だ。ミステリとしてはわりと素直なほうだが、力作といっていいでしょう。

ところで、本書にはマーク・フルカワなる日系人が登場し、イヴともいい仲になるという設定なのだが、彼の部屋で見かけた飲み物について面白い会話が出てくる。

「ポカリスエットって、いったい何なの」わたしは訊いた。「腋の下から噴き出してくるしろものが入ってるの?」
「日本のスポーツドリンクですよ。ゲータレードみたいな。ポカリスエットという名前は、トップ・アスリートの喉を渇きをとめる飲み物を連想させると考えられているんです」
「汗なんて名前がついた飲み物を誰がほしがるの?」

また、彼の本棚には三島由起夫、安部公房があるのだが、これは少し古すぎるんじゃないかなぁ。


書名 ジャスミン・トレード
作者 デニーズ・ハミルトン
翻訳 堀内静子
出版社 早川書房
ISBNコード 4-15-174051-1