テロリストのウォーゲーム


今回はボニー・ラムサンの「テロリストのウォーゲーム」を紹介しよう。原題は"Ground Zero"。今、グランド・ゼロというと例の同時多発テロで瓦礫と化した国際貿易センター跡地を思い出すが、もともとは軍事用語で爆心地といった意味だ。そして、原題が示すように核ミサイルを乗っ取ったテロリストとの闘いが物語の中心だ。ちなみに本書の米国での出版は同時多発テロの一年前の2000年9月となっている。

コロラド州シュリーバー空軍基地宇宙軍司令部での演習(ウォーゲーム)の最中にウォーゲーマーの一人が殺害される。最寄りのコロラドスプリングス警察の女性刑事アイリーン・リードが捜査にあたるが、ほぼ密室状態での殺人事件に捜査は難航する。そんな折、FBIがスパイ容疑で監視していた男が消息を絶つ。CIAの情報分析官ルーシー・ジョメッティはあらゆる情報にアクセスし、その男の行方を追うが、やがてあるテロリスト集団の存在に気づく。しかし、その時すでにそのテロリスト達はウズベキスタンのミサイル基地を占拠し、核ミサイルがアメリカを狙っていた・・・。

こんなふうに粗筋を紹介するとかなり派手な冒険活劇をイメージするが、殺人事件の容疑者への尋問などを丹念に描いており、ミステリとしての色合いが濃い。著者のボニー・ラムサンは国防省の元ウォーゲーマーという経歴だが、その経歴に寄りかかって必要以上に専門性をふりかざすこともなく、全体をうまくまとめている。

一方、殺人事件とテロリストのミサイル基地占拠という二つの事件のつながりが曖昧で釈然としないものが残る。また、テロリストとの対決という側面も意外にあっさりとしており、肩透かしをくったような気分だ。アイリーン・リード・シリーズの次回作に手を出すかどうかは微妙なところでしょう。

ところで、本編に登場するCIAのルーシー・ジョメッティは優秀な分析官だが、ちょうど妊娠中でもある。仕事ぶりに注文をつけられてルーシーは次のように啖呵を切ってみせる。

「仕事への打ちこみようは、費やした時間量や上司への媚びへつらいで計れるものじゃないでしょう。自分の仕事にどれだけ神経を注いでいるかで決まってくるんです。あたしは全神経を集中させてますよ。仕事は週四十時間で終えることができるし、実際にそうしてます。仕事の内容も気に入っているわ。でも、仕事が好きだというのと、私生活を大事にするのは別です。(後略)」

そりゃ、そうなんだけど、こう思いきれないのがサラリーマンの哀しさですね。


書名 テロリストのウォーゲーム
作者 ボニー・ラムサン
翻訳 佐藤耕士
出版社 集英社
ISBNコード 4-08-760432-2