P・T・デューターマンの「闇の狩人を撃て」は上下巻二冊、あわせて800ページにおよぶ大作だ。しかし、さすがにこれだけの長さになると、終始緊迫感のあるストーリーを展開するには難しいものがある。個々のアクション・シーンは面白くできあがっているが、全体をつなぐ一本の線が途切れがちで、読み通すには少々根気がいる。
キャンプに出かけた三人の大学生が行方不明となって三週間、何の収穫もない捜査に、FBIも捜索の中止を決定する。しかし三人の大学生の一人リンの父親、エドウィン・クライスは諦めなかった。元FBI捜査官として特別任務についた経験のある彼は一人捜索を開始する。やがて、リンが行方不明になった近くの工場跡地で謎の男たちの存在と彼らの陰謀に気づく。しかし、クライスにも、FBI時代に知った機密について口を閉ざすことを条件に、引退した過去があった。彼が動きだしたことを察知した政府は、永遠に彼の口を閉ざすために最高の暗殺者をはなってきた。
主人公のクライス、陰謀を企む男たち、そして暗殺者。この三すくみをいかに描くかがポイントとなるところだが、そこにもう一つの要素が持ち込まれる。それがFBIとCIAの対立、駆け引きであって、いささかそうした政治的な要素を盛り込み過ぎてしまって、せっかくのプロ同士の対決に水をさしている。もう少しすっきりさせたほうが良かったろう。なお、クライスが音響効果をつかって敵を幻惑する趣向はなかなか面白かったことを付け加えておこう。
本編のもう一人の中心人物はFBIの新米女性捜査官ジャネット・カーターだが、そのFBI事務所にいつもジョークをとばしている窓際族の捜査官が登場する。そのジョークを紹介しておこう。
ジャネットはしぶしぶ同意し、自分のブースに逃げ帰った。仕切りのむこうからビリーが顔を出した。
「先進国の動物園と途上国の動物園の違いはなんだ?」そうきいてきた。
ジャネットは答えを待った。
「途上国の動物園は、檻の前に動物についての説明と料理法が書いてある」
| 書名 | 闇の狩人を撃て |
| 作者 | P・T・デューターマン |
| 翻訳 | 阿尾正子 |
| 出版社 | 二見書房 |
| ISBNコード | 4-576-03036-1 4-576-03037-X |