ダナ・レオンの「ヴェネツィア殺人事件」はその題名どおりヴェネツィアが舞台の警察小説だ。ただし、作者ダナ・レオンはイギリス人なのでイタリア産のミステリとは言いにくいが、ヴェネツィア在住の経験があるようで、それを活かした内容となっている。主人公はグイド・ブルネッティ警視、本の帯にもあるように確かに一味違う。
休日にくつろいでいたブルネッティ警視を不動産台帳管理局の若い役人ロッシが訪ねてくる。ブルネッティの家が不法建築だというものだった。しかし、その後何の音沙汰もなく、ブルネッティがその事を忘れかけた頃、ロッシが電話をかけてくる。内密な話があるので安全な電話から再び連絡をすると言ったきり、二度と連絡はなかった。そして翌日、ロッシが検査中の建物の足場から転落死したことを知らされる。前後のいきさつに疑いを持ったブルネッティは事件の捜査に乗りだすが・・・。
随所にヴェネツィアらしい雰囲気がある。犯罪現場に警察が出向くのにボートを使う点もそうだ。ブルネッティは妻とも良好な関係にあるが、一方で旧知の女友達と情報交換をしたり、お酒や料理や読書を楽しみ、事件に追いまくられ苦悩する警官とは大いに異なる。残念ながら本当のヴェネツィアを知らないが、きっとこんなだろうと日本人が思い描くヴェネツィアやイタリア人にぴったりはまっている。
ところで本書を信じればイタリアといのは賄賂や情実がまかり通る土地柄らしいが、それもEU加盟後は少し変化があるらしい。ブルネッティの女友達はこんな事を言う。
「(前略)まったくEUとやらに巻き込まれたら、もう破滅よ。そのうち、賄賂を受け取ろうなんて勇敢な人は見つからなくなっちゃう」
| 書名 | ヴェネツィア殺人事件 |
| 作者 | ダナ・レオン |
| 翻訳 | 北條元子 |
| 出版社 | 講談社 |
| ISBNコード | 4-06-273702-7 |