リー・チャイルドの「反撃」を一言で表現するならば、スティーヴン・セガール主演の映画といったところだろうか。主人公ジャック・リーチャーはウェストポイント卒業後、陸軍憲兵隊に入り、少佐まで昇進した人物だ。兵士としてたぐい稀な能力を持ち、海兵隊狙撃兵養成所が開催する狙撃大会<ザ・ウィンブルトン>で優勝した実績も持つ。除隊後、風来坊のような生活をしているそのジャックが事件に巻き込まれる。
場所はシカゴ。クリーニング店からたくさんの衣類をかかえて出てきた片脚の不自由な女性。彼女を助けようと近寄ったジャック・リーチャーだったが、三人の男に銃を突きつけられ、女性と一緒に車に押し込まれる。男たちの目的はその女性ホリー・ジョンソンだったが、二人は男たちの根城のあるモンタナの山奥に連れていかれる。そこにはボーケンという男によって組織された武装集団が待っていた。ホリーを守りながら、男たちの目的を阻止するためジャック・リーチャーの本能が目覚める・・・。
こんな粗筋では、事件に巻き込まれただけと見られていた男が、実はとんでもない経歴の持ち主で、悪者たちをなぎ倒していくところがポイントだが、そんなツボはしっかり押さえてある。ジャックと敵将ボーケンの射撃競争など、読者へのサービスに努めている。ただ、それだけに話の運びは相当に強引で、武装集団の行動や、ホリーの誘拐の目的など説得力に欠けるが、それをあげつらうのはお門違いなのだろう。サラッと読める平均点のエンターテイメントといったところだ。そうそう、銃弾が飛んでいく過程を詳細に描写するあたり、映画「マトリックス」を彷佛とさせることも付け加えておきます。
さて今回紹介するのは、ジャックがホリーに対して、武装集団について語る言葉。
「結局のところ、わからないな。やつらの思考回路はまともじゃない。だから、危険なんだ。有能だが、愚かだから」
そうですね。会社や国も道を誤るのは、有能だが愚かな人間によってです。無能で愚かだからではない。
| 書名 | 反撃 |
| 作者 | リー・チャイルド |
| 翻訳 | 小林宏明 |
| 出版社 | 講談社 |
| ISBNコード | 4-06-273665-9 4-06-273666-7 |