拳銃猿


今回紹介するのはヴィクター・ギシュラーの「拳銃猿」というちょっと変わった題名のミステリだ。原題もそのもの"Gun Monkeys"なのだが、これは主人公チャーリーが属するギャングの殺し屋集団が「猿の檻」と呼ばれていることに由来する。読みながらクエンティン・タランティーノの映画を思い出したのだが、そんなスタイリッシュなミステリだ。

チャーリー・”ザ・フィックス”・スウィフトはフロリダ州オーランドを縄張りに持つギャングのボス、スタンの実行部隊、つまり殺し屋集団「猿の檻」のリーダーだった。マイアミを根城にするギャング、ベガーの依頼で、ある男から帳簿を奪い返す仕事を引受ける。しかし、その直後にスタンが姿を消し、仲間が次々と暗殺される。スタンの組織の乗っ取りを画策するベガーが裏で糸をひいていることを知ったチャーリーは一人で立ち向かうが・・・。

冷酷な殺し屋でありながら、老ボス、スタンへ義理立てし、裏切り者や敵に容赦ない銃弾を浴びせるチャーリー。スタンが失脚し、”おれ自身がおれのボスになった”と語るチャーリーが行き着く先はどこかということになるが、本書はあまり難しいことを考えずにガン・アクションを楽しめばいいのだろう。本当は随分と血なまぐさいストーリーなのだが、それをさらりと乾いたタッチで描いているのが持ち味と言えるだろう。主人公チャーリーはスタンへの義理立てについて、こんなふう語っている。

「そういうのは賢い態度とはいえないぞ、スウィフト」ジェファーズの声音は揺れていた。泣きついているのか諭しているのか、自分でもわからなくなったようだ。「スタンは沈みかけた船だ。その罐になんで石炭をくべつづけるんだ?」
「なんでか教えてやろう」声に凄みをきかせると、ジェファーズはびくっとした。「ある男をボスと決めたら、一生ついていく。でなけりゃ、けだものに成りさがるだけだ」

実は、クエンティン・タランティーノのことも、チャーリーのセリフにしろ訳者あとがきに書かれていて、ちょっと同じことを書くのも気が引けたのだが、この「拳銃猿」を紹介するには外せない点ですね。


書名 拳銃猿
作者 ヴィクター・ギシュラー
翻訳 宮内もと子
出版社 早川書房
ISBNコード 4-15-173951-3