ジェフリー・ディーヴァーがウィリアム・ジェフリーズ名義で発表した映画ロケーション・スカウト、ジョン・ぺラムを主人公とするシリーズだ。全部で三作あるのだが、早川書房はこれを連続刊行と銘打って、先月三作目にあたる「ヘルズ・キッチン」を出しており、今月二作目にあたる、この「ブラディ・リバー・ブルース」が発刊された。わざわざシリーズ物を三作目から出すにはそれなりの理由があってと思われるが、「ブラディ・リバー・ブルース」を読むと何となく理由がわかったような気がする。はっきり言おう、三作目の「ヘルズ・キッチン」が一番の出来なのだ。その作品で、ある程度の読者をつかめば売上げにつながる。逆に順番に刊行してはファンをつかめないと考えたに違いない。「ヘルズ・キッチン」は、近年のディーヴァーの作風とは趣が異なっているが、それなりに楽しめると思ったが、本編「ブラディ・リバー・ブルース」は凡庸としか言い様がない。
マーク・トゥエインがこの町に滞在して「トム・ソーヤー」の一部を執筆したといわれるミズーリ州マドックス。今はさびれたこの町に映画の撮影のために滞在していたジョン・ぺラムは偶然にも殺人事件に遭遇する。ぺラムは犯人を目撃したわけではなかったが、警察も、そして犯人達もそうは思わなかった。ぺラムに不当なまでに圧力をかける警察、彼を消そうとする殺し屋。やがてぺラムの友人が犠牲となり・・・。
こんな具合で典型的な巻き込まれ型のミステリだ。殺人事件に負傷し、半身不随となった警察官との友情物語など、物語に厚みをくわえる枝葉があるものの、あまりに中盤でモタモタしすぎだろう。
肝心のミステリ部分には不満が残るが、一方ロケーション・スカウトというペラムの仕事の内容が判ってなかなか面白い側面もある。脚本を何回となく読み、各シーンのアウトラインをつかみ、一度それをばらばらにして、ロケ地の移動が最小限ですむように整理しなおすなど、その仕事ぶりがうかがえて楽しい。もっともぺラムによれば、その映画の仕事も
「映画制作はあるレベルまでは楽しいんだ。ロケーションの仕事やメイクアップよりもずっと上の仕事につくと、嫌になってくる」
というものらしい。
| 書名 | ブラディ・リバー・ブルース |
| 作者 | ジェフリー・ディーヴァー |
| 翻訳 | 藤田佳澄 |
| 出版社 | 早川書房 |
| ISBNコード | 4-15-079559-2 |