本書の作者マイクル・コナリーのデビュー作は「ナイトホークス」で、この本は読んだ記憶があるようなものの、それ以来とんとご無沙汰してしまった。本書「シティ・オブ・ボーンズ」も「ナイトホークス」同様、刑事ハリー・ボッシュを主人公とするミステリで、マイクル・コナリーの代表的シリーズの八作目となっている。
一匹の犬がハリウッド近くの山奥から人骨らしき骨をくわえてきた。警察の捜索によって、周辺から十二歳前後の少年の骨が発掘されたが、死因は頭部への殴打。おまけに多くの骨折の痕があり、虐待されていたことを物語っていた。ハリウッド署のハリー・ボッシュ刑事は、少年の無念を晴らすため、懸命の捜査を続ける。しかし、重要参考人として聴取した現場近くの住人に逮捕歴があることが報道され、その住人が無実を訴える手紙を残して自殺をしてしまう。捜査の不手際について警察上層部から圧力を受けながらも真相を求めるハリーのもとに、少年の身元を特定する有力な情報が寄せされるが・・・。
最初に容疑者と思われた人物の自殺、被害者の特定、真犯人と思われる人物の自白、そして・・・、と紆余曲折はあるものの、謎解きの側面は全体的に平板だ。むしろ警察という官僚組織の中で、ハリー・ボッシュをはじめとする刑事たちがいろいろな悩みを抱えながらも、「時折やってくる、この腐れきった世界をまともにするチャンス」のために悪戦苦闘する姿が中心といってよい。本編でもジュリア・ブレイシャーという新人女性警官の登場が物語に複雑な色彩を与えている。また、ボッシュが殉職警官の葬儀のたびに、弔礼射撃の薬莢を拾い、その薬莢でいっぱいになった壜があるという挿話も印象的だ。ただシリーズとしては一つの転機となりそうな結末の付け方で、次回作が大いに楽しみだ。
ところで本書ではハリーが過去につきあったことのある女性検屍官テレサ・コサソンも登場してくるが、テレサの態度は極めて冷淡なものだった。
ボッシュは長いことコラソンの目を見つめた。
「いいとも、テレサ。楽しい夜を」
(中略)
鯉の池を通り過ぎながら、ふたたび映画のことを思いだし、ラストシーンで主人公の探偵が告げられたセリフをひとりしずかに口にした。
「忘れろ、ジェイク。ここはチャイナタウンだ」
説明の必要もなかろうが、この映画はジャック・ニコルソンがジェイクという探偵を演じた「チャイナタウン」ですね。もっとも、ジャック・ニコルソンが鼻を切られて絆創膏を貼っていたことは記憶にあるが、このセリフは覚えていませんでした。
| 書名 | シティ・オブ・ボーンズ |
| 作者 | マイクル・コナリー |
| 翻訳 | 古沢嘉通 |
| 出版社 | 早川書房 |
| ISBNコード | 4-15-208462-6 |