夜の牝馬


獣医でもある著者のマンダ・スコットによるシリーズ二作目(といっても本書が本邦初公開だが)「夜の牝馬」を読む。本の帯の「ディック・フランシスを凌ぐ馬を巡る怪事件」という謳い文句にひかれたかっこうだが、出版社の思う壺にはまったようだ。

グラスゴー大学付属動物病院で助教授をつとめるニーナの馬外科で、立て続けに馬が病死する事故が発生する。原因がつまめぬまま、彼女のコテージで不審火が発生し、ニーナは心に変調をきたす。セラピストのケレン・スチュワートはニーナを救うために事件の真相をさぐるが、ケレンの持ち馬も犠牲になろうとしていた・・・。

こんな粗筋なのだが、実際に物語が動きだすのは文庫本も残り三分の一となってからだ。そこからは、それなりのテンポで展開するし、犯人の動機と最後の皮肉な結末もふるっている。しかし、いかんせんそこに行き着くまでがつらい。ストーリーの中心をなす二人の女性主人公の幻覚、同性愛らしい関係、馬の手術の様子などがこれでもかと続く印象で、さすがに辟易してしまう。どうでもいいが、馬にからんだ事件というだけでディック・フランシスを引き合いに出すのは感心しない。ディック・フランシスに及びもつかないというなら判るのだが・・・。

ところで日本の大学病院における教授回診風景というのはちょっとしたミモノだが、英国でもおなじ事をやるらしい。入院したニーナを教授が診察したあとで、その教授に関する会話を紹介しておこう。

「たいていの場合、彼は難しい質問をするだけだ。自分が正しいとわかっていなければ、わざわざ何かに首を突っこんだりしない。だからこそ教授なんだよ」

これはうまいなぁ。教授を部長に変えればどの会社でも通用しそうだものね。下の者はよく見ているということでしょう。


書名 夜の牝馬
作者 マンダ・スコット
翻訳 山岡訓子
出版社 講談社
ISBNコード 4-06-273606-3